野中ともそ

野中ともそ

野中ともそは、多岐にわたる創作活動で知られる日本の作家、児童文学作家、翻訳家、エッセイスト、そしてイラストレーターです。生年月日は2月11日（生年不詳）で、東京都に生まれました。

経歴

明治大学文学部文学科の演劇学を専攻して卒業。学生時代は音楽サークルでバンド活動に没頭していました。卒業後は音楽出版社に入社し、主にキーボード関連の雑誌編集に携わります。その後フリーランスの音楽ライターとして独立し、多数の音楽雑誌に文章を提供。ブエナビスタ・ソシアル・クラブ、ランディ・ニューマン、JAPAN、オノ・ヨーコ、B'z、RCサクセション、久保田利伸、プリンセス・プリンセス、渡辺美里、BUCK-TICK、矢野顕子、ムーンライダーズなど、国内外の多岐にわたるアーティストを取材しました。ちなみに、「ともそ」というペンネームは、出版社勤務時代に生まれたユニークなあだ名をそのまま使用しているとのことです。音楽ライターの活動に加え、ファッション誌の編集者としての経験も持っています。

1992年、音楽取材のために頻繁に訪れていたニューヨークへの移住を決意します。その理由について本人は、「帰国を気にせず自由にライブを観たかったから」と語っています。このニューヨークでの生活が、後の創作活動に大きな影響を与えることになります。

作家・イラストレーターとしての活動

ニューヨーク移住後、1994年にはニューヨークでの水彩画スケッチをまとめたイラストエッセイ集『ニューヨーク街角スケッチ』を出版します。これを皮切りに、ニューヨークのアンティークやカリブ海の島々をテーマにしたイラストエッセイ集も発表しました。

作家としてのデビューは1998年です。『カリブ海おひるねスケッチ』の取材で訪れたトリニダード・トバゴとニューヨークを舞台にした長編恋愛小説、『パンの鳴る海、緋の舞う空』で第11回小説すばる新人賞を受賞し、小説家としての道を歩み始めました。

その後の小説作品も、自身の旅や経験から着想を得たものが多いのが特徴です。第2作『フラグラーの海上鉄道』は、キー・ウエストへの旅行やブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ取材のために訪れたキューバでの経験がもとになっています。児童文学分野でも評価され、『カチューシャ』は小学館児童出版文化賞と日本児童文学者協会新人賞を、『チェリー』は坪田譲治文学賞候補となりました。2020年には小説『宇宙でいちばんあかるい屋根』が映画化されるなど、幅広い読者に支持されています。近年では、コロナ禍のニューヨークと長崎を舞台に、悩みながらも繋がろうとする少年たちを描いた『遠い空の下、僕らはおそるおそる声を出す』（2023年）を発表するなど、精力的に執筆活動を続けています。

また、イラストレーターとしても活動は多岐にわたります。自身の著書の装画や挿絵を手がけるほか、梨木香歩氏の『西の魔女が死んだ』など、他の作家の書籍装画も担当しています。NTTデータ、住友生命、タカシマヤ、資生堂などの企業広告やカレンダー、会報誌表紙にもイラストを提供しており、その温かみのあるタッチは多くの人に親しまれています。

小説、児童文学、翻訳、エッセイ、イラストと、表現媒体を軽やかに横断しながら、一貫して人間や文化、そして旅への深い眼差しをもって作品を生み出しています。過去にはニューヨークや石川県で水彩画の作品展を開催した経験もあり、現在もニューヨークで詩の朗読会や講演会に参加するなど、その活動の幅を広げ続けています。

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