野口尚一

野口 尚一

野口 尚一（のぐち ひさかず）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の著名な機構学者です。1888年（明治21年）12月23日に生まれ、1986年（昭和61年）9月27日にその生涯を終えました。東京帝国大学教授、工学院大学の初代学長など、日本の工学教育と研究において重要な役割を果たしました。

生涯と学歴

野口尚一は東京の生まれです。父は野口坤之といい、自身も会津会に所属していました。旧制第一高等学校を経て、1912年（明治45年）に東京帝国大学工科大学機械工学科を卒業しました。

職歴と功績

大学卒業後、野口は鉄道院で技手として勤務しました。その後、母校である東京帝国大学に戻り、1917年（大正6年）に助教授に就任します。研究・教育活動に従事し、1937年（昭和12年）には教授に昇任しました。東京帝国大学在職中には、特許局技師も兼務しています。機構学の分野における深い知見を持ち、『穀粒層を通過する気流に関する研究』によって東京帝国大学より工学博士の学位を取得しました。

終戦後の1949年（昭和24年）には、東京帝国大学を退官し名誉教授の称号を授与されました。同年、工学院大学（当時は工学院専門学校などを含む組織）の教授に就任します。工学院が新制大学へと移行するにあたり、その初代学長に選ばれました。1971年（昭和46年）まで、およそ22年間にわたり学長を務め、この期間中に工学院大学の学科の拡充や大学院の設置など、組織の基盤強化と発展に多大な貢献をしました。

教育・研究活動に加えて、学術団体や産業界の発展にも寄与しました。第24代日本機械学会会長として、機械工学分野の発展を牽引しました。また、日本クレーン協会の会長も務め、産業機械の安全性向上などにも関わりました。

主な著作

野口尚一は、機構学をはじめとする工学分野の基礎に関する多くの著作を残しています。代表的な教科書として、1937年（昭和12年）に山海堂から出版された『機構学』があります。これは長年にわたり多くの学生に学ばれた名著です。

その他にも、以下の著作を執筆しています。

『応用弾性学』（山海堂、1934年）
『材料力学』（共立社、1936年）
* 『工業力学』（共立出版、1942年）

これらの著作は、当時の日本の工学教育において重要な役割を果たしました。

栄典

長年にわたる教育、研究、および社会への貢献が認められ、1966年（昭和41年）には勲二等旭日重光章が授与されました。

野口尚一は、日本の機械工学、特に機構学の発展に大きく貢献した人物として、その功績は今日でも高く評価されています。東京帝国大学での研究・教育、そして工学院大学の礎を築いた初代学長としての役割は特筆されます。

もう一度検索