野性の風

野性の風 - 今井美樹

今井美樹のセカンドシングルとして発表された「野性の風」（やせいのかぜ）は、1987年7月1日に当時のフォーライフ・レコード（現：フォーライフミュージックエンタテイメント）から世に送り出されました。

楽曲の背景と重要性

この楽曲は、日本の音楽シーンにおいて幾多のヒット曲を生み出してきた偉大な作曲家、筒美京平氏が今井美樹というアーティストのために特別に書き下ろした、最初で唯一のシングル楽曲です。筒美氏ならではのキャッチーでありながら奥深いメロディラインは、リリース当時、今井美樹のアーティストとしての新たな魅力を引き出すことに成功しました。筒美京平氏が手掛けた数多くの名曲の中でも、今井美樹との組み合わせは非常に希少であり、音楽史的な視点からも注目に値する一曲と言えます。

さらに、この楽曲の編曲を手掛けたのは、後に映画音楽などで世界的な評価を得ることになる久石譲氏です。久石氏が今井美樹の作品に携わったのは、この「野性の風」が初めてのことでした。この出会いを皮切りに、久石氏は今井美樹のその後のアルバムのプロデュースや、多くの楽曲の作曲・編曲を担当するようになります。まさに、「野性の風」は、今井美樹の音楽キャリアにおいて、筒美京平氏という巨匠との貴重なコラボレーションを実現させると同時に、久石譲氏との長きにわたるクリエイティブな関係が始まるきっかけとなった、記念碑的な一曲と言えるでしょう。

映画主題歌としての役割

「野性の風」は、東宝東和が配給した角川映画『漂流教室』の主題歌として起用されました。この映画のテーマ曲として広くオンエアされたことは、楽曲の認知度向上に大きく貢献し、今井美樹のアーティストとしての地位を確立する上で重要な役割を果たしました。映画の内容と連動した楽曲の持つ疾走感と壮大さが、多くの人々に強い印象を与えたのです。

制作クレジットと収録曲

この楽曲の制作には、才能あるクリエイターが集結しました。作詞は川村真澄氏が担当し、情感豊かな言葉を紡ぎ出しています。作曲は前述の通り筒美京平氏、そして編曲は久石譲氏が手掛けました。

シングルには、表題曲「野性の風」の他に、「三日月のサーベル」がカップリング曲として収録されています。

多様な収録バージョン

「野性の風」は、オリジナルのシングルバージョン以外にも、様々なアルバムやベストアルバムに収録されており、その人気の高さを示しています。

セカンドアルバム『elfin』（1987年9月21日発売）には、シングルとは異なる雰囲気を持つアルバムリミックスバージョンが収録されました。
今井美樹にとって初のベストアルバムとなった『Ivory』（1989年12月6日発売）にも、代表曲として当然のように選ばれています。このアルバムは今井美樹の初期のキャリアを総括する重要な作品であり、「野性の風」はその中でも特に輝きを放っています。
1998年7月1日にリリースされたサードベストアルバム『IMAI MIKI from 1986』には、興味深いバージョン違いが存在します。このアルバムに収められたバージョンは、オリジナルのシングルバージョンと比較して、わずかにフェードアウトが早いという特徴を持っています。このような細かな違いは、熱心なファンにとってコレクションの楽しみの一つとなっています。
さらに、2004年6月16日発売のベストアルバム『Ivory III』にも再び収録されるなど、長きにわたり様々な形でリスナーに届けられています。これは、「野性の風」が単なる一過性のヒットに終わらず、今井美樹の音楽カタログにおいて欠かせない定番曲として認知されている証拠と言えるでしょう。

関連情報

作曲者の筒美京平氏に関連する作品としては、彼の作曲家活動40周年を記念して制作された豪華なCD-BOX『THE HIT MAKER -筒美京平の世界-』にも本楽曲は収録されており、筒美氏の輝かしい功績を辿る上で重要な一曲として位置づけられています。また、本楽曲がリリースされた1987年は、日本の音楽シーンが多様化し、新たな才能が登場した年でもあり、「野性の風」は当時の音楽の流れを理解する上でも記憶されるべき一曲と言えるでしょう。

このように、「野性の風」は、今井美樹というアーティストのキャリアにおける重要な節目に位置づけられるだけでなく、筒美京平氏と久石譲氏という二人の音楽家との貴重な接点であり、映画主題歌としてのタイアップ効果も相まって、今日まで多くの音楽ファンに愛され続けている名曲です。

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