野性時代フロンティア文学賞

野性時代フロンティア文学賞

野性時代フロンティア文学賞は、株式会社KADOKAWAの角川書店が主催する、新たな書き手を発掘するための公募文学賞です。この賞は、その名称を変えながらも、長年にわたり日本のエンターテインメント小説界に多くの才能を送り出してきました。その歴史は、「野性時代青春文学大賞」から始まり、現在の「小説野性時代新人賞」へと続いています。

前身：野性時代青春文学大賞

フロンティア文学賞の前身にあたるのが、2005年から2008年にかけて全4回開催された野性時代青春文学大賞です。この賞は、角川書店とフジテレビジョンが共同で主催し、角川書店が発行する小説誌『野性時代』上で募集と結果発表が行われました。応募対象となったのは、ジャンルを問わず、「世界を変えうる」ような力強い熱意を持った小説作品でした。

大賞受賞者には300万円の賞金が授与され、さらに『野性時代』誌上での連載権が与えられました（第4回では特製「青春象」も贈呈）。最終候補作には10万円が贈られました。

この賞の特徴的な選考プロセスは、新人賞としては異例ともいえる、読者参加型の仕組みにありました。まず、『野性時代』編集部が作品を読み込み、一次選考を通過した候補作を選定します。これらの候補作品は、『野性時代』誌上およびウェブサイト上で全文公開され、ウェブ上での読者投票による二次選考が行われました。この読者投票の結果も参考に、編集部、書店関係者、そして読者代表からなる最終選考会によって、受賞作が決定されるという、多角的な視点を取り入れた選考方法が採用されていました。

野性時代フロンティア文学賞の誕生とその変遷

野性時代青春文学大賞の終了を受け、2009年には新たに野性時代フロンティア文学賞が創設されました。主催者は当初、前身と同様に角川書店とフジテレビジョンでしたが、第5回からはKADOKAWA 角川書店とフジテレビジョンとなり、第6回以降は株式会社KADOKAWA 角川書店の単独主催へと移行しました。作品の募集と発表媒体も変更され、第1回は『野性時代』で行われましたが、第2回以降は『小説 野性時代』へと移りました。

このフロンティア文学賞では、対象とする作品の幅がさらに広がり、恋愛、ミステリー、冒険、青春、歴史、時代小説、ファンタジーなど、特定のジャンルにとらわれない、より広義のエンターテインメント小説全般が求められるようになりました。賞金の額にも変更があり、創設当初の第1回から第5回までは記念品と共に300万円が贈られましたが、第6回以降は記念品と100万円となりました。

選考委員も時代と共に変化しました。第1回から第5回までを池上永一氏と山本文緒氏が務め、第6回から第10回にかけては冲方丁氏、辻村深月氏、森見登美彦氏が選考を担当しました。

現在の名称：小説野性時代新人賞

2020年、第11回からは賞の名称が「小説野性時代新人賞」と改められました。これにより、フロンティア文学賞の系譜は、新たな名前の下で引き継がれています。

小説野性時代新人賞となってからの選考委員は、第11回から第14回まで冲方丁氏、辻村深月氏、森見登美彦氏が引き続き務め、第15回からは道尾秀介氏が新たに加わり、四名の作家によって選考が行われています。

このように、野性時代フロンティア文学賞とその前身・後身は、常に時代のニーズに合わせて形を変えながらも、エンターテインメント小説の分野で新しい才能を発掘し、読者に魅力的な作品を届けるという役割を果たし続けています。

これらの賞の受賞作は、多数が書籍化され、広く読まれています。また、過去の受賞者や選考委員に関する情報は、公式サイトなどで確認することができます。

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