野沢清

野沢清（のざわ きよし）

野沢清は、昭和7年（1932年）に東京で生まれ、平成18年（2006年）に亡くなった日本の造園家です。日本造園アカデミー会議の議長を務め、造園を学ぶための私塾「園学むだん塾」を主宰するなど、業界の発展と後進の育成に尽力しました。彼の生涯は、造園に対する深い愛情と、卓越した技術、そして教育者としての情熱に彩られています。

生い立ちと教育

野沢清は、東京の杉並区荻窪で六人兄弟の五番目として誕生しました。小学校二年生の時に父親の転勤で宇都宮市へ転校。戦時中は疎開を経験し、終戦後に東京へ戻り、府立第八中学校（現東京都立小山台高等学校）へ復学しました。美術部に所属し、美術大学への進学を志しましたが、三浪の末に断念。その後、東京農業大学緑地学科（卒業時は造園学科）へ入学しました。大学卒業後、下北沢の園芸店で二年間修行し、その後、母校で井下清教授の下で一年間勤務。東京都公園課への就職を勧められましたが、大学の先輩であり、造園家として活躍していた荒木芳邦の誘いを受け、1961年から大阪府池田市の荒木造園で働くこととなりました。

造園家としての歩み

関西での三年間の生活の後、過労のため東京の実家で休養。その後、造園家の中島健に師事し、1963年から綜合庭園研究室に勤務しました。1966年には、モントリオール万国博覧会の日本館庭園工事のため渡加。工事終了後には、アメリカやヨーロッパ各地の庭園を視察。帰国後、ローマにある日本文化館の補修工事を監理しました。中島健に八年間師事した後、1971年に独立し、野沢・鈴木造園設計事務所を設立。以降、35年間、数多くの造園プロジェクトに携わりました。

受賞歴

野沢清の業績は、数々の賞によって高く評価されています。1980年には、静岡県城北公園や関東学院大学校内修景など一連の作品で、東京農業大学造園大賞を受賞。1983年には、静岡市城北公園日本庭園で日本造園学会賞作品賞を受賞しました。さらに、1992年には薬師の泉庭園で、活き粋いたばしまちなみ景観賞を、1993年には忍城址博物館外構でさいたま景観賞、1995年には都市景観大賞を受賞しています。

代表作

野沢清は、数多くの庭園やランドスケープデザインを手がけました。代表的な作品には以下のようなものがあります。

萩原邸庭園（1975年）
関東学院大学六浦キャンパス修景（1976年）
静岡市城北公園基本設計、日本庭園（1978年、1982年）
世田谷区立美術館造園（1986年、内井昭蔵と共同設計）
一宮市博物館造園（1987年、内井昭蔵建築設計事務所）
京都市桂坂東CED、中央CED造園（1988年、内井昭蔵建築設計事務所）
板橋区薬師の泉庭園（1989年）
大阪花と緑の博覧会政府苑山の造園（1990年）
行田市忍城址博物館庭園（1992年）
味方村平澤・曾我記念館造園（1993年、香山壽夫と共同設計）
吹上新御所造園（内井昭蔵建築設計事務所）
彩の国さいたま芸術劇場造園（1994年、香山アトリエ）
酒田市美術館造園（1997年、池原義郎と共同設計）
長久手町文化の家造園（1998年、香山アトリエ）
可児市文化創造センター造園（2002年、香山アトリエ）
角田山妙光寺三重搭周り地泉庭園（2004年、「園学むだん塾」施工）
善正寺庭園（2006年、「園学むだん塾」施工）

これらの作品は、自然との調和を重視し、その場所にふさわしい景観を創造する野沢清の卓越した才能を示しています。

著書と教育活動

野沢清は、造園に関する多くの著書を執筆しました。

『石の庭・自然の庭』（1970年）
『「園学」のすすめ : 造園を哲学する』（2008年）
『新園芸手帖 日曜耀植木屋たのしみ作り方/庭木の手入れと刈り込み』（1966年）
* その他多数

また、後進の育成にも力を注ぎ、関東学院大学や東京農業大学などで非常勤講師を務めたほか、愛知県植木センターや川崎市民アカデミーなどでセミナー講師を務めました。さらに、希望者には随時、造園パースの講習会を開催し、自身の主宰する「園学むだん塾」では、若い造園家たちを指導しました。

晩年と遺産

野沢清は、その生涯を通じて造園の発展に貢献し、多くの美しい庭園を世に残しました。彼の作品は、自然との調和を追求したデザインと、その場所の特性を最大限に活かした設計によって、人々に安らぎと感動を与え続けています。また、教育者としても多くの後進を育て、造園界の発展に大きく寄与しました。

野沢清の思想と技術は、現在もなお、多くの造園家や研究者に影響を与え続けています。彼の遺産は、美しい庭園とともに、後世に語り継がれていくでしょう。

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