野沢那智

野沢那智（のざわ なち）

生い立ちと幼少期

野沢那智は1938年、東京に生まれました。彼は4人兄弟の末っ子として育ち、幼少期に父を亡くしました。母は弁当屋を営み、家計を支えるために懸命に働いていました。この経験が、彼の表現者としての感受性に影響を与えたと言われています。

演劇との出会い

中学時代、野沢は母親に連れられて新国劇を観に行き、演劇への情熱に目覚めました。しかし、最初は舞台装置に興味を持ち、舞台美術家を目指していました。高校では演劇部に所属し、演出だけでなく舞台装置、照明、演技なども体験。自由な発想を持ちながらも学業をおろそかにした結果、学校から退学勧告を受ける事態に。母の勧めで本郷高等学校に転校したものの、遅まきながらも演劇への道を選びました。

プロの演出家への道

高校卒業後、彼は國學院大学に入学しますが、大学生活はあまり充実せず、演劇部の先輩たちと劇団四季の作品を観ることで刺激を受けます。大学3年生の時、駒形俊一と知り合い、同じく演出家の道を志して劇団を立ち上げました。1960年に大学を中退し、イベントや作品を企画する中で演出家としての基盤を築きます。

声優活動のスタート

演出家として活動する傍ら、野沢はNHKのテレビドラマに出演し、徐々に声優としても脚光を浴び始めました。最初は犯人役などを演じることが多く、キャリアの浅さに悩む時期もありましたが、次第にアニメや洋画の吹き替えで姿を見せるようになります。特に、アニメ『狼少年ケン』で声優デビューを果たしました。

繁栄と活動の幅の広げ方

1963年には劇団薔薇座を設立し、声優としてだけでなく演出家としても活躍の場を広げました。野沢の多様な才能が認められ、彼は多くの人気作品で声の顔ともなり、特にアラン・ドロンやアル・パチーノなど一流俳優の吹き替えで名を馳せました。

ラジオパーソナリティとしての活動

彼はまた、ラジオ番組『パックインミュージック』でパーソナリティを務め、番組は大人気を誇りました。長年にわたってリスナーと親しまれることとなり、リスナーとの掛け合いが高く評価されました。彼のキャラクターの面白さや知識量が長寿番組を支えました。

晩年と遺産

2003年に自身の芸能事務所「オフィスPAC」を設立し、声優養成所を設けて未来の才能を育成しました。晩年には健康を損ね、2010年に肺がんで亡くなりましたが、彼の残した功績は声優界に今も生き続けています。野沢那智の声は多くの人々に愛され、彼自身も「声優である前に俳優である」と語ったように、演技に情熱を注ぎ続けた素晴らしい人生でした。

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