野獣刑事

映画『野獣刑事』について

『野獣刑事』は、1982年10月2日に公開された日本映画で、東映京都撮影所が制作を手掛け、工藤栄一が監督、緒形拳が主演を務めました。物語は、大阪府今宮警察署の刑事・大滝誠次を中心に展開し、彼の野獣的な捜査手法や、彼を取り巻く人間関係を描いています。

あらすじ

大滝誠次は、高度な捜査手法を駆使しながらも、倫理を無視する手段で事件解決に走る刑事です。彼は、報道を使って事件の情報をリークし、自らの私利私欲のために飲食するなど、規範から逸脱した行動を取り続けます。その挙句、彼が逮捕した犯人の情婦である山根恵子と不倫関係になることに。しかし、恵子の息子・稔は大滝に心を開かず、彼との関係はとても複雑です。

更に、物語には女子大生の惨殺事件が絡み、その捜査では大滝が独自に潜入捜査を敢行しますが、彼が容疑者に強引な手段で迫りすぎた結果、解任されてしまいます。大滝は、恵子に捜査のためのおとり役を頼むも、恵子は彼との結婚を夢見てこれを引き受けます。一方、出所した阪上という男との奇妙な友情も芽生えますが、阪上は再び麻薬に手を染め、悪化の一途を辿ります。

スタッフやキャスト

この作品では、脚本を神波史男が務め、撮影は仙元誠三が担当しました。また、音楽には大野克夫が関わり、主題歌は「泳ぐ人」として大野轟二が歌っています。キャストには緒形拳の他に、いしだあゆみ、泉谷しげる、小林薫、成田三樹夫、益岡徹など、多彩な俳優陣が揃っています。

制作の背景

脚本が完成するまでには、神波が綿密に作り上げたプロットがあり、様々な映画の影響を受けていました。また、実際の取材を元にしたキャラクター造形も見どころです。特に、大阪のドヤ街を舞台にしたことで、作品にリアリティが増しています。

工藤監督が現場で手を加えるスタイルを持ち、脚本に即座に反映させることで、ダイナミックに映像化しました。特に、全編オールロケを敢行し、独特な雰囲気を演出しました。

映画の公開と評価

『野獣刑事』は、大作『大日本帝国』の公開延期により、予定より遅れて上映されることとなりました。この作品は、その過激な描写とストーリーから、観客の間で話題となりました。興行成績も良好で、いしだあゆみは本作を通じて女優としての評価をさらに高めました。

評価に関しては、快楽亭ブラックから「本物の刑事ドラマ」と称賛され、一方で泉谷しげる自身は後半の展開に疑問を呈しました。このように、作品は賛否両論を呼びましたが、多くのファンに支持されたことは間違いありません。

最後に

『野獣刑事』は、日本の刑事映画の中でも特に強烈な印象を残す作品となっています。倫理を超えた行動が引き起こす人間関係の葛藤や、社会の暗部に潜む現実が巧みに描かれ、多くの観客に深い印象を与えました。

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