野獣死すべし (1980年の映画)

映画『野獣死すべし』について

『野獣死すべし』（やじゅうしすべし）は、1980年に公開された日本の映画で、原作は大藪春彦の同名小説です。この作品は、原作の3度目の映画化にあたり、主演には松田優作が起用され、監督は村川透が務めました。本作はハードボイルド映画としての特徴を持ちながらも、内面的なドラマに焦点を当てた新しい解釈がなされています。

ストーリーの概要

映画は、東京を舞台にした物語で、大雨の夜に起きた警察官の刺殺事件から始まります。被害者は警視庁捜査第一課の岡田良雄。拳銃を奪われた彼が死亡したことで、警察は緊急的な捜査を開始します。その拳銃を使用した違法カジノ強盗殺人事件が発生し、世間は騒然となります。

主人公の伊達邦彦は東京大学を卒業したエリートですが、過去の戦場経験から「野獣」と化してしまった複雑な人物です。彼は現在、翻訳のアルバイトをしながら静かな生活を送っています。しかし、岡田を追っていた刑事の柏木秀行が伊達に目を付け、彼の秘密を探り始めます。伊達は次の犯罪対象として銀行を選び、その計画を実行に移そうとします。

伊達と真田の関係

伊達は大学の同窓会で出会ったウェイターの真田徹夫に目を付け、彼の内面に秘められた「野獣」を感じ取ります。双方は次第に親しくなり、伊達は真田を銀行襲撃の共犯者にしようと誘惑します。最終的に真田は恋人である雪絵を手にかける運命を辿り、伊達の影響を受けながら深い闇へと引き込まれていきます。

銀行襲撃計画と衝撃の結末

共犯者となった真田と伊達は、銀行襲撃を決行し、無慈悲に人々を襲います。しかし、その場にいた華田令子は伊達を見つけ、彼に対して愛情を持つ一方で厳しい選択を余儀なくされます。襲撃後、逃走する2人は列車に乗り込みますが、刑事の柏木も彼らを追い詰めます。緊迫した場面で、伊達は柏木とのロシアンルーレットを行い、心理的な緊張が一層高まります。

物語はここで更に混乱を極め、伊達は銃の扱いに狂気を帯びると同時に現実と戦場の記憶が交錯していきます。クライマックスでは、伊達が真田を射殺し、彼自身も狂気に陥ります。ラストシーンは非常に解釈が分かれるものであり、観る者に深い余韻を残します。

映画としての評価

本作は興行的には成功とは言えませんでしたが、その後の映画界において強烈な印象を残しました。特に松田優作の鬼気迫る演技と、作品全体の雰囲気は多くの映画ファンに支持されています。また、ストーリーの抽象性やラストシーンの謎めいた描写は、時が経っても語り継がれています。

スタッフとキャスト

『野獣死すべし』の脚本を担当した丸山昇一は、原作とは違った視点で伊達邦彦を描きました。松田優作の役作りも評価され、彼自身が創造したキャラクターは観客に強い印象を与えました。名脇役として知られる鹿賀丈史や小林麻美も出演し、それぞれが物語に厚みを加えています。

まとめ

『野獣死すべし』は、1980年代の日本映画における特異な存在です。作品の持つ独特の緊張感や心理描写、そしてラストシーンの解釈の余地が、映画を特別なものとしています。松田優作の演技が光るこの作品は、今なお多くの人々に語り継がれています。

もう一度検索