野田正彰

野田正彰（のだ まさあき）は、1944年生まれの日本の精神科医、評論家、ノンフィクション作家です。高知県出身で、比較文化精神医学を専門としています。彼の研究は、精神病理学、文化人類学、社会学の領域が交わる分野に焦点を当てており、その幅広い知識と多角的な視点から、現代社会におけるさまざまな問題点を指摘しています。

経歴

野田は、1962年に土佐高等学校を卒業後、1969年に北海道大学医学部を卒業しました。その後、精神科医としてのキャリアをスタートさせ、1977年には長浜赤十字病院の精神科部長に就任しました。1980年には、パプアニューギニア高地での比較文化精神医学的研究を行い、異文化における精神疾患の様相を調査しました。その後、研究者、教育者としての活動を始め、1987年には神戸市外国語大学国際関係学科の教授、1990年にはウィーン大学日本文化研究所の客員教授、1991年には京都造形芸術大学芸術学部の教授、2000年には京都女子大学現代社会学部の教授、そして2004年には関西学院大学の教授を歴任しました。2012年に関西学院大学を定年退職しています。

受賞歴

野田の功績は数々の賞で称えられています。1984年に人文科学協会賞を受賞し、1987年には『コンピュータ新人類の研究』で大宅壮一ノンフィクション賞とテレコム社会科学賞を受賞しました。1991年には冲永賞を受賞し、1992年には『喪の途上にて』で講談社ノンフィクション賞を受賞しました。

研究活動

野田は、パプアニューギニアやソ連（現ロシア）における社会変動下の人々の精神病理学的研究を行いました。また、中国、ベトナム、東ヨーロッパにおける戦争加害者、戦争被害者の精神病理学的研究にも携わりました。さらに、日本の青少年、女性、中高年、老人など、様々な世代の精神病理学的研究にも取り組み、現代社会における精神的な問題点に着目しています。近年では、災害救援学、庭園の文化論、園芸療法研究など、幅広い分野にも関心を寄せ、研究活動を展開しています。

社会的論争

野田は、月刊誌「新潮45」（2011年11月号）に「大阪府知事は『病気』である」という記事を寄稿し、当時の大阪府知事であった橋下徹氏を「演技性人格障害か非社会性人格障害」と断定しました。この件に対し、橋下氏は名誉毀損として訴訟を起こしましたが、2016年4月、大阪高裁は新潮社側の勝訴を認め、2017年2月には最高裁が橋下氏の上告を退け、野田と新潮社の勝訴が確定しました。また、2015年12月には、浄土真宗本願寺派の記念講演で「土人」という差別的表現を用いたことが問題となり、後に本願寺派から公式に謝罪文が出されました。

著作

野田は多くの著書を執筆しており、そのテーマは多岐にわたります。『狂気の起源をもとめて―パプア・ニューギニア紀行』(1981)は、彼の初期の研究テーマである比較文化精神医学の成果をまとめたものです。その他にも、『コンピュータ新人類の研究』(1987)、『喪の途上にて―大事故遺族の悲哀の研究』(1992)、『災害救援』(1995)など、社会的な問題や人間の心理を探求した作品を多数発表しています。これらの著作は、現代社会における様々な問題点に対する深い洞察を示しており、読者に多くの示唆を与えています。

野田正彰は、精神科医、評論家、ノンフィクション作家として多角的な視点から社会を見つめ、様々な問題を提起し続けている人物です。その研究活動や著作は、現代社会を理解する上で重要な視点を提供し、多くの人々に影響を与えています。

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