野田正義

野田 正義

野田 正義（のだ まさよし）氏は、1979年3月5日に東京都で生まれた日本の元社会人野球選手です。右投げ右打ちの投手として社会人野球の名門、TDKの主力選手として長く活躍しました。

来歴

東京都出身。高校時代は桜美林高等学校で野球部に所属。外野手としてプレーし、最終学年の夏には西東京大会でベスト8まで勝ち進む健闘を見せましたが、残念ながら甲子園への出場は叶いませんでした。

高校卒業後の1997年、セレクションを経てTDKに入社します。入部と同時に、肩の強さを買われて投手へと転向。この転向が、その後の輝かしいキャリアの始まりとなりました。早くからチームに貢献し、その年の都市対抗野球大会出場に貢献。キャリア初期はスピードを重視した投球スタイルで、入社3年目には自己最速となる146km/hを記録するなど、速球派として注目を集めました。しかし、その後は投球スタイルを変化させ、緩急を巧みに使い分ける技巧派投手としてモデルチェンジを図ります。TDKは都市対抗への出場が必ずしも安定しているチームではありませんでしたが、野田投手はNTT東北、JR東日本東北、JTといった全国レベルの強豪チームから補強選手として声がかかり、社会人野球の聖地である東京ドームのマウンドに立ち続けました。

2006年、都市対抗での輝き

野田投手の選手生活における最大の栄光は、2006年の第77回都市対抗野球大会での活躍です。この大会の1回戦を前に、彼は都市対抗野球大会への10年連続出場選手として表彰を受けました。記念すべきその試合、東広島市の伯和ビクトリーズを相手に先発すると、相手打線をわずか4安打に抑え込む完封勝利を挙げ、チームに勢いを与えました。これはTDKにとって、都市対抗9回目の出場にして初めての勝利でした。この歴史的な1勝を機に、TDKは快進撃を開始します。2回戦ではJR東海にサヨナラ勝ち。準々決勝のホンダ戦ではリリーフとして無失点ピッチングで勝利に貢献しました。準決勝の日本通運戦では先発するも、相手打線に捕まり早めに降板。決勝戦の先発が危ぶまれましたが、当時の船木千代美監督は「長いイニングを投げていない。野田で大丈夫」と判断し、横浜市の日産自動車との決勝戦のマウンドを野田投手に託しました。

決勝戦では、自身の失策から先制点を許す苦しい立ち上がりとなりましたが、味方打線がすぐに逆転して野田投手を援護。彼はそこから粘り強く投げ続けます。2対2の同点となった後、日産のエースであった高崎健太郎投手（後にプロ野球・横浜ベイスターズへ入団）がワイルドピッチなどで崩れたのとは対照的に、野田投手は尻上がりに調子を上げ、相手打線を抑え込みます。9回を投げ切り、3失点での完投勝利を達成。この劇的な勝利により、TDKは創部以来初めての都市対抗優勝を果たし、東北地方に初めて黒獅子旗をもたらすという歴史的快挙を成し遂げました。

栄誉と引退

チームは初優勝の栄誉と共に、その年の大会で最も優秀なチームに贈られる小野賞も受賞。そして、野田投手は大会期間中の5試合全てに登板し、そのうち2勝を挙げたことが高く評価され、都市対抗野球大会の最優秀選手に贈られる橋戸賞を受賞しました。この年、社会人野球界で最も印象的な活躍を見せた投手として、社会人ベストナイン（投手部門）にも選出されています。2007年、2008年もエースとしてチームを都市対抗へ導き、特に二次予選東北大会でのJR東日本東北のエース、攝津正投手（後に福岡ソフトバンクホークスで活躍）との二年に渡る緊迫した投手戦は、社会人野球ファン語り草となる名勝負でした。その後、年齢とともに球威にわずかな陰りが見え始め、大原慎司投手ら若手投手の台頭もあり、登板機会は徐々に減少。2010年シーズン限りで現役を引退しました。

引退後

現役引退後は、株式会社TDKの社業に専念していましたが、2017年秋からは再びTDK野球部の現場に戻り、投手コーチに就任しました。後進の指導にあたりましたが、その後退任しています。

プレースタイル

現役時代の野田投手は、多彩な変化球を駆使して打者を打ち取る技巧派として知られました。ストレート、ツーシームに加え、カーブ、チェンジアップ、スライダーなどを自在に操り、打者のタイミングを外す投球が最大の持ち味でした。派手な三振を奪うタイプではなく、打たせて取る堅実なピッチングでゲームメイクする能力に長けていました。

主な表彰・タイトル

第77回都市対抗野球大会 橋戸賞（最優秀選手）、大会優秀選手（2006年）
都市対抗野球大会 10年連続出場表彰（2006年）
* 社会人ベストナイン（投手部門、2006年）

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