野老正昭

野老正昭：日本の建築界に貢献した建築家

野老正昭（ところ まさあき、1929年 - 2011年6月）は、日本の建築界に多大な貢献を果たした建築家です。慶應義塾大学工学部予科を経て、日本大学旧工学部建築学科を卒業という経歴を持ち、建築設計において確かな技術と深い知識を有していました。

彼のキャリアは、1956年から1958年まで竹中工務店東京支店設計部で勤務したことから始まります。この期間、東京貿易会館、沖電気高崎工場、外務省庁舎といった大規模プロジェクトの設計に携わり、実践的な経験を積みました。これらのプロジェクトを通して、大規模建築物の設計における技術やノウハウを習得し、後の独立開業へと繋がる重要な経験となりました。

1958年、野老は独立し、野老設計事務所を設立しました。独立後は、数多くの建築物の設計・建設を手掛け、その卓越した設計能力と建築に対する深い造詣は、多くの関係者から高く評価されました。

教育者としての顔も持ち合わせていた野老は、1966年から日本大学生産工学部建設工学科、1977年から日本大学理工学部建築学科で建築設計の非常勤講師を務めました。後進の育成にも尽力し、建築業界の発展に貢献しました。若手建築家の育成にも熱心で、自身の経験や知識を惜しみなく伝え、多くの建築家を輩出しました。

建築家としての彼の功績は、数々の受賞歴にも表れています。1963年にはヤマト科学厚木工場の設計で神奈川建築コンクールに入選、1983年には「越屋根の家」で東京建築士会住宅コンクールに入賞するなど、その設計力は高く評価され、建築界において大きな注目を集めました。代表的な作品として、日本キリスト改革派東京恩寵教会会堂やTOMOE本社ビルなどが挙げられ、これらは彼の建築思想をよく表すものとなっています。

また、野老は建築業界への貢献が認められ、2001年には全日本建築士会連合会から会長表彰を受賞しました。さらに、1998年からは東京都建築物応急危険度判定士として、建築物の安全性確保にも尽力しました。日本建築家協会建築図集の初代図書刊行委員長も務め、建築図書の普及にも貢献しました。

彼の建築家としてのキャリアは、単なる設計業務にとどまりません。教育者、審査員、そして業界団体における指導者としての役割を担い、建築界全体の発展に貢献しました。

私生活では、インテリアデザイナーの野老春子を妻に、アーティストの野老朝雄を一人息子に持つなど、豊かな家族関係の中で、建築家としての道を歩みました。

野老正昭の建築家としての功績は、多くの建築物を通して後世に語り継がれ、日本の建築界に大きな足跡を残しました。慶應義塾特選塾員、三田文学会会員、日本建築学会終身正会員、日本建築家協会終身会員としての肩書きも、彼の建築界における地位の高さを示しています。

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