野菊の墓 (映画)

映画『野菊の墓』について

『野菊の墓』は1981年8月8日に公開された、日本映画界の重要な作品であり、松田聖子にとって初の主演作品です。伊藤左千夫の同名小説を原作に、澤井信一郎が初めて監督を務めたことでも注目を集めました。本作は1955年と1966年に公開された『野菊の如き君なりき』の映画化に続く第三作であり、原作と同名のタイトルがつけられた初めての作品です。

概要と制作スタッフ

本作は、カラー映像でビスタサイズで制作され、制作は高岩淡と相澤秀禎によって行われました。企画は吉田達と高村賢治が担当し、脚本は宮内婦貴子、撮影には森田富士郎、照明は梅谷茂が関わりました。音楽は菊池俊輔が手掛け、編集は西東清明によって行われました。

出演者

松田聖子は、民子役を演じ、政夫役には新人の桑原正を配しました。そのほか、樹木希林や赤座美代子といった実力派俳優も出演しており、丹波哲郎が特別出演しています。松田聖子の主題歌「花一色〜野菊のささやき〜」も話題となり、映画のテーマを彩る役割を果たしました。

企画の背景

本作の企画は、東映プロデューサーの吉田達によって立案されました。彼は1979年に女性向け映画の成功を見て、女性映画の可能性を感じ、この作品を『野菊の墓』にリメイクすることを思いつきました。松田聖子が急成長する人気を持つ中、彼は彼女を主演として迎え入れることに決めました。特に、松田聖子の母体であるサンミュージックとの連携を取り、映画を製作することに多大な努力をしました。

撮影の過程

撮影は1981年の5月に始まり、当初は20日間のスケジュールで計画されていましたが、松田聖子の人気が急上昇したため、サンミュージックからは短縮を求められるなどの困難もありました。それでも、最終的には豊かな内容を実現するために、調整が行われました。監督の澤井は、若い情熱と独特のスタイルを持ち込み、古典的な原作に新たな解釈を加えています。

ロケ地

群馬や埼玉、長野など、さまざまな場所でロケが行われ、映像美と日本の田舎風景が映画に深い感情を与えました。この人物ドラマの中で、民子と政夫は心の葛藤を抱えながら成長する姿が描かれており、観る者の心に深く響きます。

原作との関係

原作である伊藤左千夫の「野菊の墓」との対比も注目されており、宮内の書き直した脚本は原作の持つテーマを現代においても再現したいとの思いから成り立っていました。しかし、澤井と宮内の間には意見の相違があり、それが撮影や作品全体に影響を与える部分もあったようです。

作品の評価

公開当初から観客は主に松田聖子を目当てに映画を観に来ており、興行的にも一定の成果を挙げました。しかし、演出やキャスティングが賛否を呼ぶ中、一部の批評家は作品の深さや魅力を高く評価しました。

『野菊の墓』は、ただのアイドル映画ではなく、日本映画の一端を担う作品として位置づけられています。映画制作の難しさや、松田聖子というアイドルの新たな側面を見ることができる貴重な作品でもあります。

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