野辺地天馬

野辺地 天馬（のべち てんま）

野辺地天馬は、日本の児童文学者であり、キリスト教の牧師としても知られる人物です。彼の本名は三右衛門で、1885年1月17日に岩手県福岡町（現在の二戸市）に生まれました。天馬は1890年に父が郵便局勤務のため転任し、盛岡市へ移住しました。盛岡中学校（現・岩手県立盛岡第一高等学校）に通い、同級生には著名な詩人石川啄木や、その後著者として知られる伊藤圭一郎もいました。

幼少期から教会に通い続け、1899年に洗礼を受けた彼は、同年に盛岡で行われた中田重治の講演を聞くことで、宣教活動に献身する決意を固めます。その後、盛岡中学校を中退し、東京の青山学院中学部へ進学しました。また、1904年には神保町にある東洋宣教会聖書学校でキリスト教を本格的に学びました。

天馬はその後、岩手県の花巻市や伊豆、仙台、名古屋、千葉など各地で伝道活動に従事しましたが、1917年には東洋宣教会を離れ独立し、児童講演社を設立しました。この団体は宣教活動や教団の支援を受けることなく、講演や執筆を通じて児童に対する伝道と児童文学の普及を目指しました。特に日曜学校での教授法を広めるために、全国を訪れて多くの子供たちに教えを施しました。紙芝居の手法を取り入れることで、彼の伝達方法は多くの子供たちに受け入れられました。

また、児童文学誌『虹』や『小光子』を発行し、婦人之友社の『子供之友』の編集者としても知られています。彼の著作には、童話集『金の鈴』や『母を慕ひて』があり、子供向けの「旧約聖書」なども執筆しました。これらの作品は彼の牧師としての経験を反映し、子供たちに向けた温かいメッセージが込められています。

戦後において、彼は日本ホーリネス教団東京聖書学院で教授として後進を指導しました。天馬の教え子たちは、彼の影響を受けて児童文学と信仰の結びつきを深めていったことでしょう。彼の文学活動は、子供たちにキリスト教の教えを分かりやすく伝える重要な役割を果たしました。

主な著作

• - 『青春の旅』（1962年、武井武雄装丁）
• - 『晩秋の感謝』（1966年、武井武雄装丁）
• - 『近世偉人物語』（1918年、丁未出版社）
• - 『鐘の音』（点字図書あり）
• - 『フランクリン物語』（1946年、愛育社）
• - 『こども日日の光』（1948年、武井武雄装丁）
• - 『日曜百話』（1957年、ヨルダン社）
• - 『新約物語』（1947年、武井武雄装丁、日新社）

また、共同著作として『日本キリスト教児童文学全集』第8巻や、校閲に関わった『キリスト教例話事典』などもあります。絵本『A Story Of a Piper フエヲフクヒト』（1946年、画・武井武雄）や季刊絵本『ハト』（編集）なども手がけました。

1965年に彼は亡くなりますが、野辺地天馬の業績は今なお日本の児童文学と教育の分野に強い影響を与え続けています。

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