金名の郷頭

金名の郷頭（かんなのごうとう）

金名の郷頭は広島県福山市新市町常の金名地区にある、江戸時代中期に建設された石積みの橋梁兼治水構造物です。この地域の水流を調節するために造られた金名の郷頭は、金名川の支流である芦田川に接し、その構造と歴史的な背景が今日でも高く評価されています。

構造について

金名の郷頭は、高さ7.8m、長さ8.7mというかなりの規模を持つ石積みダムです。中央下部には幅1.8m、高さ1.4m、長さ5.8mの導水部分が設けられ、上部は通路として利用されています。この構造は、一度かさ上げされ全体の高さが調整されています。工法としては打ち込み接ぎと谷積み技法が使われ、導水部分には古墳群の石室に見られる先進的な「持ち送り技法」が採用されています。これにより、江戸時代としては非常に技術的に優れたダムが作られたと言えます。

特にこの構造物の全体的な形状は、川の上流に向かって凸型のアーチを描いており、「世界最初のアーチ式ダム」とされることもあります。金名川は、約3kmの長さを持ち、その水流は神谷川を経て芦田川となり、最終的には瀬戸内海に達します。

呼称の由来

地元住民には「ごうとう」と呼ばれ、後に「村の入り口」を意味する「郷頭」という漢字があてられました。さらに、「金名の郷戸」とも表記されることがあります。ここでの「ごうと」という語は、川の遊水地や澱みに使われる地名の一つで、地名の由来についてさまざまな説がありますが、古い言い伝えが影響していると考えられています。

歴史的な背景

金名の郷頭が建設されたのは200年以上前で、その後の歴史の中で数々の自然災害に直面しながらも、その威厳を保ってきました。1840年には豪雨により上流の切池堤防が決壊し、金名の郷頭がその水流を防ぐ役割を果たしたとされています。このような経緯から、地域住民にとって金名の郷頭は重要な交通路と治水施設であり続けました。

しかし、1906年には県道が新設され、この場所の交通路としての役割は薄れました。その後も地域住民はこの構造物を日常的に利用していましたが、治水機能や文化的価値に対する理解は薄れがちでした。

近年の再評価と保全活動

1990年代に入って金名川の護岸の劣化が進む中、「金名の郷頭」が撤去される予定となりましたが、広島大学の教授らがその文化財としての価値を訴えたことがきっかけとなり、地域住民の意識が変わっていきました。そして、2001年には撤去計画が変更され、「金名の郷頭」が保全されることが決まったのです。これにより新たな橋が異なる位置に設置されることになりました。

その後も環境整備が行われ、休憩所や案内板が設けられ、地域の人々が再びこの貴重な構造物を深く理解し、地域の誇りとして育てていく姿勢が見られます。2016年には福山市制施行100周年記念事業としても紹介されるなど、さまざまな形で評価されています。

交通アクセス

金名の郷頭へのアクセスは、新市町のバス停から徒歩数分のところにあり、周辺の県道からも容易に行き来できます。地域の歴史を感じるこの場所は、地元の人のみならず、多くの観光客にとっても有意義な訪問地となっています。

金名の郷頭は、その美しさと歴史的価値により、これからも地域のシンボルとして大事にされ続けることでしょう。

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