金得九

金得九（キム・ドゥック）について

金得九（キム・ドゥック、1959年8月1日 - 1982年11月18日は、韓国の江原道出身のプロボクサーで、1982年にはOPBF東洋太平洋ライト級王者に輝きました。彼のキャリアは波乱に富んでおり、特に世界挑戦の結果が彼の人生に及ぼした影響は計り知れません。

キャリアの始まり

金得九は、1978年12月7日にプロボクサーとしてデビューしました。早くからその才能が認められ、1980年には韓国ライト級王座を獲得しました。少しずつ実績を積み重ね、1982年2月28日には、15戦目で東洋太平洋ライト級王座に挑戦し見事に獲得。以降は、7月18日までの間に3度のタイトル防衛を果たすなど、精力的に活動を展開しました。

タイトル防衛の一環として行ったノンタイトル戦でも勝利を収め、彼のボクシングキャリアは順調に進展しているように見えました。しかし、その後の一戦が彼の運命を大きく変えました。

世界タイトルへの挑戦

1982年11月13日、金は20戦目で、アメリカ・ネバダ州のラスベガスでWBA世界ライト級王者レイ・マンシーニと対戦しました。この試合は彼にとって初めての世界タイトル挑戦でしたが、結果は厳しいものでした。試合は14ラウンドまで進みましたが、マンシーニの強烈な一撃を受け、結果的に14回19秒でKO負けを喫しました。試合終了後、金は意識を失い、緊急に病院に搬送されました。

悲劇と影響

金得九の容体はその後、4日間にわたって脳死状態が続きました。1982年11月18日、彼は27歳の若さでこの世を去りました。この出来事は、当時のボクシング界に衝撃を与えました。金の死の後、彼の実母が3ヶ月後に自ら命を絶ち、さらにマンシーニ戦のレフェリーであったリチャード・グリーネも自殺してしまうなど、周囲に多くの悲劇を引き起こしました。

また、金の死はメディアでも大きく取り上げられ、韓国におけるボクシングのイメージが一変しました。以前は国民的人気を誇っていたこのスポーツは、危険な競技としての見られ方が始まり、米国の連邦議会でもボクシングの安全性についての公聴会が開かれる事態にまで発展しました。

そして、金得九の悲劇を受けて、ボクシングのルールが見直されることとなります。15ラウンド制から12ラウンド制に短縮され、ラウンド間の休憩時間が90秒に延長されるなど、安全対策が講じられました。また、オリンピックのボクシング競技では1984年からヘッドギアの着用が義務付けられました。

映画と遺産

金得九の生涯とその影響力は、2013年に公開された映画『The Fight That Changed Boxing Forever』を通じて再評価されています。この作品は、彼の卓越した技術や試練に満ちた人生を描き、今なお多くの人々の心に響いています。彼の存在は、ボクシングの安全性が重要であることを示す警鐘となり、後世に大きな教訓を残しています。

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