金正淵

金 正淵（きん せいえん、キム　ジョンヨン、김정연）は、1914年1月7日に現在の朝鮮民主主義人民共和国、平安南道江西郡で生を受けた、戦前から戦中にかけて日本のスピードスケート界で活躍した選手です。1992年7月16日にその生涯を終えました。

少年時代から故郷を流れる大同江の氷上でスケートに親しんでいました。その後、公立平壌高等普通学校を経て、1932年に日本の明治大学商学部へ進学。大学でさらに競技に打ち込むことになります。

金正淵の競技者としてのピークは、1930年代中盤に訪れました。特に顕著な成績を残したのが、全日本スピードスケート選手権大会です。当時の選手権は、現在のような種目別ではなく、500メートル、1500メートル、5000メートル、そして10000メートルの合計タイムをポイント化し、その総合得点で順位を決定するという形式が取られていました。彼はこの形式で行われた1934年大会と1935年大会において、見事二連覇を達成しています。

1934年2月に鴨緑江で開催された選手権では、500メートルで3位につけたものの、得意の中長距離である5000メートルと10000メートルでいずれも1位を獲得し、総合優勝を決めました。翌1935年1月に日本の日光で行われた大会でも、500メートルでは石原省三らに及ばなかったものの、それ以外の1500メートル、5000メートル、10000メートルの三種目すべてで1位となり、総合連覇を達成しました。これらの結果は、彼の優れたスタミナと長距離種目における強さを明確に示しています。

全日本選手権での輝かしい活躍が認められ、金正淵は1936年にドイツで開催されたガルミッシュパルテンキルヒェン冬季オリンピックの日本代表に選出されました。オリンピックという国際舞台での挑戦でしたが、世界の強豪との体力の差に直面し、期待された成績を残すことは叶いませんでした。出場した種目の結果は、1500メートルで15位、5000メートルで21位、10000メートルで13位というものでした。しかし、当時の日本スケート界における彼の存在感は大きく、明治大学在学中にはスケート部のキャプテンも務めるなど、チームを牽引する立場でもありました。

1937年に明治大学を卒業した金正淵は、故郷の朝鮮に戻り、朝鮮総督府の学務課に勤務しました。

第二次世界大戦後、彼は韓国に生活の場を移しました。しかし、朝鮮戦争の勃発により、故郷に残していた全ての財産を北朝鮮側に没収されるという過酷な状況に見舞われます。財産を失った状態で、韓国での新たな生活をゼロから始めることを余儀なくされたのです。

戦後もスケートへの情熱は失わず、韓国においてスケート関連団体の幹部を務めるなど、競技の発展に貢献しました。苦難を乗り越え、韓国スケート界の要職を務めながら、1992年に78歳でその波乱の生涯を終えました。

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