鈴木義伯

鈴木 義伯（すずき よしのり）

日本の実業家。

生い立ちと初期キャリア

1949年（昭和24年）1月19日、福島県相馬郡新地町に生を受けました。東京電機大学工学部電子工学科で学び、1972年（昭和47年）に卒業後、当時の日本電信電話公社（現在のNTT）の門を叩き、通信技術の分野でそのキャリアをスタートさせました。

NTTデータでの活躍

通信インフラ構築の経験を積んだ後、1988年（昭和63年）には株式会社NTTデータへと活躍の場を移します。ここでは、金融システム分野に深く関わることとなり、金融システム担当部長として重要な役職を担いました。その後もリージョナルバンキングシステム事業本部長など、金融機関向けのシステム開発やサービス提供を統括する要職を歴任し、日本の地域金融システムを支えるITインフラの発展に貢献しました。NTTデータグループ内で培った専門知識とマネジメント能力は高く評価され、2005年（平成17年）にはNTTデータフォース株式会社の代表取締役社長に就任しました。

東京証券取引所での革新

2006年（平成18年）、日本の金融市場の中枢である東京証券取引所へと転じ、執行役員に就任します。そして、同社の常務取締役および最高情報責任者（CIO）として、市場の構造そのものを変革する一大プロジェクトを牽引することになります。それが、次世代株式証券取引システム「arrowhead（アローヘッド）」の企画・開発です。当時の東証システムは老朽化が指摘されており、国際的な競争力を維持・向上させるためには抜本的な刷新が不可欠でした。鈴木氏はCIOとして、この大規模かつ複雑なプロジェクトの指揮を執り、システムのアーキテクチャ設計から開発、導入に至るまでを推進しました。arrowheadの最大の特長は、その圧倒的な処理能力と高速性でした。従来のシステムと比較して飛躍的に取引速度を向上させたことで、ミリ秒単位での高速取引（HFT: High-Frequency Trading）が可能となり、国内外の投資家からの信頼を獲得しました。この高速取引の実現は、市場参加者がより迅速かつ正確に取引を行えるようにし、結果として市場の流動性を劇的に向上させることに繋がりました。arrowheadの成功は、東京証券取引所を世界の主要な市場の一つとしての地位を確固たるものにする上で、極めて重要な役割を果たしました。鈴木氏のリーダーシップと技術的な知見が、日本の証券市場の近代化と競争力強化に大きく貢献したと言えます。

日本郵便での職務とその後

東京証券取引所での業績が評価される中、2017年（平成29年）4月には日本郵便株式会社に専務執行役員CIOとして迎え入れられました。社会基盤を支えるもう一つの重要なインフラである郵便事業において、IT戦略の責任者としてその手腕を発揮しました。デジタル化が進む現代社会において、郵便・物流事業の効率化や新たなサービス開発における情報通信技術の活用は喫緊の課題であり、鈴木氏はここでも重要な役割を担いました。約4年半にわたり専務執行役員を務めた後、2021年（令和3年）12月31日をもって同執行役員を退任しました。

長年にわたり、NTTグループ、東京証券取引所、日本郵便という、日本の社会インフラを支える重要な組織において、情報通信技術の専門家として、また経営者として要職を歴任。特に東京証券取引所でのarrowhead開発における貢献は、日本の金融市場史における特筆すべき業績として記憶されています。

出典・脚注：
本記事は提供された情報を基に構成しています。
具体的な出典情報は入力に含まれていないため、記載を省略しています。

もう一度検索