鉄人28号白昼の残月

今川泰宏が監督・脚本・絵コンテを担当し、横山光輝の漫画作品『鉄人28号』を基に制作された劇場アニメーション。配給と宣伝はメディア・スーツが手掛け、2007年 3月31日に東京・新宿武蔵野館で封切られました。

概要

本作は、2004年に放送されたテレビアニメシリーズ『鉄人28号』と多くの主要スタッフやキャスト、そして世界観を共有しています。しかし、登場人物の職業設定や物語の展開はテレビ版とは異なり、独立した作品として成り立っています。当初、劇場版は2005年の公開が予定されており、テレビシリーズのDVD-BOXには特報映像も収録されていましたが、諸般の事情により公開時期が長らく未定となっていました。本編の一部にはテレビ版の映像が流用されている箇所も見られ、DVD版にはテレビシリーズの第一話冒頭シーンが特典映像として収録されています。音楽には、作曲家・伊福部昭の既存楽曲（「シンフォニア・タプカーラ」「兵士の序楽」など）が使用されており、これらは全て本人の了解を得て選曲されました。

あらすじ

第二次世界大戦終結から十年後の日本。復興が進むなか、動物園で発見された不発弾を狙って突如怪ロボットが現れます。少年探偵であり鉄人28号の操縦者である金田正太郎は、鉄人を駆ってこれを迎撃しますが、苦戦を強いられます。その窮地を救ったのは、正太郎と同姓同名の青年「ショウタロウ」でした。彼は自身こそが鉄人の正当な操縦者であると主張し、正太郎をも凌駕する卓越した操縦技術で怪ロボットを撃破します。共に戦ったことで、二人のショウタロウの間には兄弟のような絆が芽生えていきます。しかし、不発弾の正体が、植物以外の生物を破壊する非人道的な大量破壊兵器「廃墟弾」であることが判明します。この兵器は、二人の父である金田博士によって開発されたものでした。さらに、正太郎の命を執拗に狙う謎の傷痍軍人「残月」や、廃墟弾の利権を狙う巨大組織「ベラネード財団」が出現し、事件は複雑な様相を呈していきます。

主な登場人物とメカニック

物語の中心となるのは、少年探偵の金田正太郎と、金田博士の養子で正太郎の義兄にあたるショウタロウです。二人の「正太郎」が、父の遺産である鉄人28号と、その裏に隠された廃墟弾を巡る陰謀に立ち向かいます。彼らを支えるのは、金田博士の元助手で敷島重工を経営する敷島博士や、正太郎の親代わりである大塚署長です。敵対勢力としては、正太郎を狙う傷痍軍人の残月、そして廃墟弾の奪取を目論むベラネード財団のクロロホルムやトップのベラネードが登場します。また、金田博士の共同研究者であったビッグファイア博士も事件に関わってきます。テレビ版とは設定が異なるキャラクターもおり、例えば高見沢や村雨一家の面々は、本作独自の立ち位置で物語に彩りを添えています。

メカニックでは、主人公の操る鉄人28号に加え、正太郎が戦うことになる様々な怪ロボット（B-89、モンスター、ギルバート、バッカス、サターンなど）が登場します。特に重要なのは、金田博士が開発した非殺傷性（対生物）の大量破壊兵器廃墟弾と、その本体とも呼ばれる移動要塞兵器大鉄人です。大鉄人は鉄人28号に酷似した外見を持ちながら遥かに巨大で、全身に無数の廃墟弾を搭載した異形の姿をしています。

スタッフとキャスト

監督・脚本・絵コンテは今川泰宏が担当。原作は横山光輝です。音楽は伊福部昭の既存楽曲が用いられました。主題歌は「進め！正太郎」「鉄人28号」で、六本木男声合唱団倶楽部が歌唱しています。アニメーション制作はパルムスタジオが行いました。

キャストは、金田正太郎をくまいもとこ、ショウタロウを粟野史浩が演じました。敷島博士は牛山茂、大塚署長は稲葉実、村雨竜作は若本規夫、ビッグファイア博士は中村正、クロロホルムは西村知道、ベラネードは内海賢二といった声優陣が参加しています。

鉄人28号 白昼の残月