鉄砲玩具

鉄砲玩具：日本の子供たちの遊び道具の歴史

鉄砲玩具は、古くから日本の子供たちに親しまれてきた玩具です。その歴史は江戸時代中期にまで遡り、時代とともに素材や構造、デザインは大きく変化してきました。本稿では、鉄砲玩具の歴史を時代別に詳細に見ていきます。

江戸時代の鉄砲玩具

江戸時代の鉄砲玩具は、主に竹を素材として作られていました。弾丸として、紙製の小さな石や杉の芽などを筒に入れ、勢いをつけて押し出すシンプルな構造が一般的でした。「山吹鉄砲」「紙玉鉄砲」「豆鉄砲」などが代表例です。特に「豆鉄砲」は、明治時代初期には子供たちの間で広く普及しました。

明治・大正時代の発展

明治時代に入ると、木製や金属製の鉄砲玩具が登場し始めます。「台銃」と呼ばれる銃の形をしただけのものや、「ポンポン鉄砲」と呼ばれるコルク栓を発射するタイプなどが人気を博しました。ポンポン鉄砲は、箱根や大宰府などの木製玩具産地で土産物として販売され、多くの子供たちに愛されました。また、山梨県の一部地域では、男子の誕生を祝って木製鉄砲が贈られる風習もあったと伝えられています。

明治20年には村田銃が玩具化され、日清・日露戦争前後には、スプリング内蔵のコロップ銃や連発銃、鋳物製のピストルなどが登場。さらに、空気銃も作られるようになりました。露店や玩具店で販売され、射的の流行も相まって、少年たちに広く愛用されました。明治後期には、発火銃や構造の工夫を凝らした引っ掛け銃、サーベル銃など、より精巧な鉄砲玩具が登場しました。大阪では百連発式の鉄砲玩具が製作された記録もあります。

大正時代には、西部劇映画の流行を受けて「カウボーイ銃」が登場。さらに、銃声機能や発火装置を備えた玩具も考案されました。関東大震災後には、弾丸が的に吸い付く「吸い付き銃」も登場しています。大正期の鉄砲玩具は、スプリング内蔵が基本的な構造でした。

昭和時代の鉄砲玩具と戦後の変化

昭和時代に入っても、明治・大正時代の構造を踏襲した鉄砲玩具が作られ続けました。しかし、新しいタイプの鉄砲玩具は登場せず、これは軍への新式銃の採用が少なかったことなどが背景にあると考えられます。昭和期の鉄砲玩具は、軍国主義的な風潮を反映して、発火装置や銃声機能を備えたものが人気を集めました。

終戦後も鉄砲玩具の人気は衰えなかったものの、1951年から1952年の戦争玩具追放運動や少年犯罪防止の観点からの規制により、その製造や販売は制限を受けました。それでも、西部劇やスパイ映画の人気もあり、世界各国の銃器を模した玩具が作られ続けました。技術も進歩し、実物に近づいた精巧な鉄砲玩具が製造されるようになりました。1965年には、高品質な鉄砲玩具が玩具業界の賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

まとめ

鉄砲玩具は、時代の変化や社会情勢を反映しながら、長年にわたり日本の子供たちの遊び道具として親しまれてきました。シンプルな構造から精巧なものまで、多様な種類が存在し、その歴史は日本の玩具文化の一端を垣間見せてくれます。 素材や機能、デザインの変化を通して、日本の歴史や文化、社会風潮を読み解くことができる興味深い存在と言えるでしょう。

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