鉄道員 (1956年の映画)

映画『鉄道員』について

『鉄道員』（てつどういん、原題: Il Ferroviere）は、1956年に制作されたイタリアのドラマ映画であり、モノクロ作品として多くの人々に深い印象を残しました。この作品は、監督であり主演でもあるピエトロ・ジェルミが手掛け、エドアルド・ネヴォラやルイザ・デラ・ノーチェなどの実力派俳優と共演しています。特に、第二次世界大戦後のイタリアにおける庶民の感情や生活をストレートに描いたこの映画は、映画史において重要な位置を占める作品です。

あらすじ

物語は、鉄道機関士アンドレアを中心に展開されます。アンドレアは、長年にわたり鉄道の仕事一筋で生きてきた男性で、その姿は幼い末っ子・サンドロにとって大きな誇りでした。しかし、アンドレアの厳格な性格は、長男マルチェロや長女ジュリアには嫌われており、家族との関係は決して良好ではありませんでした。

ある日、アンドレアが運転する列車に、若者が突如として投身自殺するという悲劇が発生します。この衝撃的な出来事がきっかけで、アンドレアは赤信号を見逃し事故を起こしかけ、結果として会社から左遷されることになります。それまでは誇り高く仕事をしていた彼にとって、この出来事は大きな転機となりました。

彼は職場の労働組合が計画していたストライキに対して不満を訴えるものの、彼の声は無視され、次第に酒に溺れるようになります。その一方で、家族内では更なる問題が発生します。流産を経験し、夫婦仲が悪化していたジュリアが不倫に走った結果、マルチェロと父アンドレアの間に激しい口論が起こります。家庭内の緊張が高まる中、マルチェロはついに家を出ていってしまいます。

ストライキは決行されるものの、アンドレアは機関車を運転し、スト破りという形をとります。次第に彼は周囲の友人から孤立し、家庭にも戻らなくなります。末っ子のサンドロは、その父を探し回り、昔の友人たちと共にアンドレアを支えようと奮闘します。ついに彼が連れ出した酒場で、アンドレアは友人たちに温かく迎え入れられ、家族との和解の兆しも見え始めてきます。

しかし、アンドレアの健康状態は徐々に悪化しており、クリスマスパーティの夜、彼は再びギターを手に取りセレナーデを奏でながら穏やかな息を引き取ります。彼の人生は、仕事と家族への愛情、そして過去の苦悩を通じて、観る者に深い感銘を与えるものとなっています。

受賞歴

この映画は、その優れた内容が評価され、1956年のカンヌ国際映画祭では国際カトリック映画事務局賞を受賞しました。こうした実績は、映画の深いテーマ性とそのメッセージが多くの人々に共鳴したことを示しています。

最後に

『鉄道員』は、ただの映画ではなく、戦後イタリアの庶民の喜怒哀楽を感じさせる作品として、今でも多くの人々に愛されています。アンドレアという一人の男を通して描かれた物語は、観る者に深い感動を呼び起こし、家庭や友人の大切さ、そして人生の儚さを考えさせる一作です。

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