鉄道神社 (大分市)

鉄道神社：大分駅の歴史を刻む小さな社

大分県大分市要町、JRおおいたシティの屋上庭園「シティ屋上ひろば」にひっそりと鎮座する鉄道神社。その歴史は、大分駅開業と深く結びついています。

1911年、大分駅が開業。翌年には、現在の府内中央口付近に2本のクスノキが植えられました。樹齢を重ね、高さ約20メートルに成長したクスノキは、大分駅のシンボル的存在として人々に親しまれていました。しかし、駅構内の拡張工事の進展に伴い、これらのクスノキは撤去の危機に瀕します。移植も困難と判断されたクスノキは、1964年8月、惜しまれつつも伐採されました。

伐採されたクスノキは、ただ消え去ることはありませんでした。翌1965年、その木材を用いて、大分駅旧駅舎の屋上に鉄道神社が建立されたのです。この神社には、豊後国一宮である柞原八幡宮の分霊が祀られています。クスノキの由来については諸説ありますが、もしそれが柞原八幡宮の参道にあったものだとすれば、その縁起の良さは格別と言えるでしょう。ちなみに、伐採されたクスノキからは能面も作られ、駅長室に大切に飾られているそうです。

その後、2012年3月、大分駅の高架化工事が完了。旧駅舎は取り壊され、新駅ビル「JRおおいたシティ」が建設されることになります。この改築に伴い、鉄道神社は一時的に高架下の九州旅客鉄道大分支社内の仮殿へと移転しました。そして2015年4月10日、新たな本殿が「JRおおいたシティ」8階部分の屋上庭園「シティ屋上ひろば」に遷座。遷座祭が執り行われ、現在に至ります。

このように、鉄道神社は単なる神社というだけでなく、大分駅、ひいては大分市の歴史と発展を象徴する存在と言えるでしょう。駅舎の移り変わりを静かに見守り、クスノキの魂を宿したこの小さな社は、訪れる人々に、過ぎ去った時代と未来への想いを繋ぐ静かな空間を提供しているのです。 小さな神社ですが、その歴史と背景を知れば、より一層深い感慨が湧いてくることでしょう。 屋上庭園という意外なロケーションも、この神社の個性と言えるかもしれません。大分駅を訪れた際には、ぜひ足を運んで、その歴史に思いを馳せてみてください。

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