銀行法

銀行法について

銀行法（昭和56年法律第59号）は、日本の銀行に関する基本的な法律であり、銀行の業務の公共性に鑑み、信用維持と預金者保護、そして金融の円滑化を図ることを目的としています。この法律は、銀行業を営む上での「業法」としての役割を果たし、1981年の制定以来、金融環境の変化に対応して改正が重ねられてきました。

銀行法の構成

銀行法は、以下の章で構成されています。

第一章：総則（第1条～第9条）
第二章：業務（第10条～第16条）
第二章の二：子会社等（第16条の2～第16条の4）
第三章：経理（第17条～第23条）
第四章：監督（第24条～第29条）
第五章：合併、会社分割又は事業の譲渡もしくは譲受け（第30条～第36条）
第六章：廃業及び解散（第37条～第46条）
第七章：外国[[銀行]]支店（第47条～第52条）
第七章の二：外国[[銀行]]代理業務に関する特則（第52条の2～第52条の2の10）
第七章の三：株主（第52条の2の11～第52条の35）
第一節：通則
第二節：銀行主要株主に係る特例
第三節：銀行持株会社に係る特例
第七章の四：銀行代理業（第52条の36～第52条の61）
第一節：通則
第二節：業務
第三節：経理
第四節：監督
第五節：所属銀行等
第六節：雑則
第七章の五：電子決済等代行業（第52条の61の2～第52条の61の30）
第一節：通則
第二節：業務
第三節：監督
第四節：認定電子決済等代行事業者協会
第五節：雑則
第七章の六：指定紛争解決機関（第52条の62～第52条の84）
第一節：通則
第二節：業務
第三節：監督
第八章：雑則（第53条～第60条）
第九章：罰則（第61条～第67条）
第十章：没収に関する手続等の特例（第68条～第70条）
附則

関連する規則等

銀行法に関連する規則として、以下のようなものが挙げられます。

銀行法施行令
銀行法施行規則
主要行等向けの総合的な監督指針
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針
金融コングロマリット監督指針
預金等受入金融機関に係る検査マニュアル
預金等受入金融機関に係る検査評定制度

銀行法の沿革と主要な改正

銀行法は、時代とともに変化する金融環境に対応するため、数々の改正が行われてきました。

前史

1872年（明治5年）：国立[[銀行条例]]公布
1876年（明治9年）：国立[[銀行条例]]改正
1890年（明治23年）：銀行条例公布
1927年（昭和2年）：旧銀行法公布

新銀行法下

1981年（昭和56年）：全改正 新銀行法公布
2001年：特定取引勘定の設置に係る認可の廃止
2002年：銀行の主要株主及び議決権大量保有者、保険商品窓口販売の拡大
2004年：子会社におけるネットワーク上のプリペイド事業の解禁等
2006年：銀行代理業等
2008年：外国[[銀行]]代理業等、証券会社・銀行・保険会社のファイアーウォール規制の緩和
2009年：金融ADR制度の導入
2016年：情報通信技術の進展等に対応した改正
2021年：デジタル化や地方創生への貢献を図るための改正

銀行の業務範囲

銀行法では、銀行が行える業務範囲を以下の通り定めています。

固有業務（第10条第1項）

預金または定期積金等の受入れ
資金の貸付けまたは手形の割引
為替取引

付随業務（第10条第2項）

債務の保証または手形の引受け
その他、法令で定められた付随業務

その他の業務

投資助言業務（第11条第1号）
他業証券業務（第11条第2号）
自己信託業務（第11条第3号）
排出権業務（第11条第4号）
法定他業（第12条）

銀行グループの業務範囲

銀行グループの業務範囲も法律で限定されています。

子会社の業務範囲（第16条の2第1項）
子法人等、関連法人等及び特定出資会社の業務範囲

銀行の業務に関する規制

銀行・銀行持株会社の議決権保有

銀行議決権保有者：5%超の議決権保有者は届出義務、1%以上の増減で変更報告義務。
銀行主要株主：原則20%以上の議決権保有には認可が必要。報告命令・立入検査の対象。
銀行持株会社：設立には認可が必要。業務範囲、子会社、議決権保有できる会社範囲に制限。

銀行法上のアームズレングスルール

銀行とその特定関係者、またはその顧客との取引は、通常の条件で行うことが義務付けられています。これにより、銀行経営の健全性を損なう取引が規制されます。

禁止行為

銀行は、顧客に対して以下の行為が禁止されています。

虚偽告知
断定的判断の提供
不当な条件での信用供与
重要事実の不告知
優越的地位の濫用

預金等の受入れに関する規制

情報提供義務
特定預金契約に係る契約締結前交付書面の交付義務

信用供与に関する規制

大口信用供与規制
取締役等に対する信用の供与規制

自己資本比率規制

バーゼル合意に基づく自己資本比率規制が適用されます。

バーゼルⅡ第1の柱：最低所要自己資本比率
バーゼルⅡ第2の柱：金融機関の自己管理と監督上の検証
バーゼルⅡ第3の柱：市場規律

銀行に対する検査・処分

金融庁は、銀行に対して検査を行い、法令違反があった場合は業務停止や免許取消などの処分を行うことができます。

検査

銀行および銀行代理業者への検査
必要に応じて、子法人等や業務委託先への検査

処分

業務の停止等
免許の取消し等

商号規制

銀行は、商号中に「銀行」という文字を使用することが義務付けられています。

銀行でない者は、商号に「銀行」を示す文字を使用してはならない

銀行法上の免許・資格

銀行業を営むには、以下の免許や認可が必要です。

銀行免許（法4条）
外国[[銀行]]免許（法47条）
銀行主要株主の認可（法52条の9）
銀行持株会社の認可（法第52条の17）
銀行代理業の許可（法第52条の36）

参考文献

小山嘉昭『詳解銀行法』（金融財政事情研究会）

関連項目

銀行
信用金庫法
金融機関の信託業務の兼営等に関する法律
BIS規制
金融機能強化法
銀行の証券子会社
* クレジットカード

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