銘苅子

銘苅子（めかるし）

沖縄の伝統芸能である組踊の一作品、『銘苅子（めかるし）』は、玉城朝薫によって創作されました。この作品は、その抒情的な物語が評価され、1756年に尚穆王の冊封の祝宴において初演されたとされています。『銘苅子』は、天女と人間の結婚およびその別れをテーマにしており、能楽の名作『羽衣』との共通点も指摘されることがあります。

物語のあらすじ

物語は、農夫の銘苅子が畑からの帰り道に不思議な泉を見つけるところから始まります。この泉は、神秘的な光に包まれ、芳香が漂っていました。銘苅子は好奇心から隠れてその様子を見守っていると、そこに美しい天女が現れます。天女は、長い髪を優雅に洗い始めます。その瞬間を狙って、銘苅子は彼女の羽衣を奪ってしまうのです。

羽衣を失った天女は天に帰れなくなり、仕方なく銘苅子の妻となります。二人はやがて子どもを授かり、姉の「おめなり」と弟の「おめけり」として成長します。物語は、彼らの成長と共に進展していきます。時は流れ、子供たちはある日の子守唄を歌っている際に、母の羽衣がどこに隠されているかを無意識のうちに漏らしてしまいます。それを聞いた天女は、羽衣が米蔵に隠されていることを知り、ある夜、子供たちを寝かしつけた後に羽衣を取り戻すことを決意します。

天女は涙を流しながら羽衣を手にし、再び天に帰ります。残された姉弟は、母を失った悲しみから泣き叫び、翌日から彼女を探し回るのですが、銘苅子は母親が人間ではないため、もう帰ってこないことを子どもたちに告げます。

そんな時、首里王府の使者が現れ、王がこの不思議な物語を耳にしたことを伝えます。使者は、姉のおめなりは王城で育て、おめけりは成長後に高い地位に就かせる計画を伝え、さらに銘苅子には士族の地位を与えることを告げます。喜びと感謝の気持ちで満たされた親子は、感謝の意を示しながら家へと帰ります。

『銘苅子』は、その美しい物語と深いテーマによって、今なお沖縄の文化の中で親しまれています。この作品は、愛と失恋、そして家族の絆を捉えた普遍的なテーマが盛り込まれており、演じられるたびに新たな感動を呼んでいます。

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