鋳物

鋳物（いもの）について

鋳物とは、溶かした金属を型に流し込み、冷却して固化させた金属製品のことを指します。この技術は鋳造と呼ばれ、古くから人類の金属加工に利用されてきました。鋳造は鍛造と異なり、金属を叩いて成形するのではなく、型に流し込むことで形を整えます。このため、鋳造品は鍛造品に比べて強度が劣るものの、製作が容易な特徴があります。

鋳造の歴史と材料

鋳造技法は、金属の使用が始まった古代から続いており、主に金、銀、銅、青銅、黄銅のような銅合金が使われていました。これらの金属は自然界で得られるため、加工がしやすかったのです。特に金属の中で鉄は融点が高く、鋳造が難しいため、貴重な武器となっていました。現代においては、鋳物製品の材料としてアルミニウム、亜鉛、マグネシウムなどが多く使用されています。

鋳物の型は、古代から主に砂を用いたもので、砂型が現在も広く使われています。しかし、砂だけでは乾燥後に型が崩れてしまうため、ベントナイトという添加物を加えたり、酸硬化性フラン樹脂や熱硬化性フェノール樹脂を使用することで型の強度を向上させる工夫がされています。

この砂型の利点には、次のような点が挙げられます。
1. 成型の容易さ: 型が簡単に作成できるため、複雑な形状の製品も生産可能です。
2. ガスの放出: 熔けた金属が固まる際にガスが発生しますが、砂型の隙間がそれを素早く放出します。
3. 良好な冷却性: 砂は比熱が小さく、保温性を持っているため、金属が急冷されずに緩やかに冷却され、高品質な鋳物が得られます。
4. 再利用が可能: 使用後の砂型は砕いて再利用することができます。

型を作る際には、通常、鋳造したい形状の木型が必要です。木型からは複数の砂型を作成でき、量産品には金属製の型を使うこともあります。

日本における鋳物技術

日本における鋳物の技術は弥生時代に遡ると考えられており、当時は銅器が広く使用されていました。古墳時代や飛鳥時代を経て、各種の陶器や工芸品、仏像などが鋳物技術を用いて製作されました。江戸時代以前には地域ごとに伝統的な鋳物づくりが行われており、例えば岩手県の南部鉄器や富山県の高岡銅器などはその代表です。

近代に入ると、埼玉県川口市のような地域では近代的な金属工業として鋳物産業が発展しました。日本では「鋳物師」と呼ばれる職人がこの技術を受け継いでおり、各地には「鋳物師」「鋳物師町」といった地名が残っています。特に、朝廷から免許を受けた「御鋳物師」の流れを汲む現在の事業者たちは、定期的に交流し技術を継承しています。現存する鋳物師の中には、鎌倉時代に創業した小田部鋳造や、戦国時代からのナベヤなどがあり、彼らの技術と伝統は今に受け継がれています。

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