鏖殺の凶鳥

鏖殺の凶鳥（おうさつのフッケバイン）

『鏖殺の凶鳥』は、日本の作家佐藤大輔によって書かれたSF小説で、2000年に富士見書房から新書版が出版されました。2003年には角川文庫より『凶鳥〈フッケバイン〉 ヒトラー最終指令』として文庫化され、2023年3月には同作者の『黙示の島』と併せて中央公論新社から新たに愛蔵版が刊行されました。物語は1945年、ドイツのカッツェンボルンという街で巻き起こる異常な事件を描いています。この作品の副題は『1945年ドイツ・国籍不明機撃墜事件』ということからもわかる通り、戦争の混乱の中で起きた謎めいた出来事がテーマになっています。

ストーリーの紹介

物語は、第二次世界大戦末期の1945年4月12日から始まります。この時、崩壊しつつあるドイツ第三帝国に、正体不明の航空機が墜落します。この航空機はドイツでは「フッケバイン」と呼ばれ、アメリカでは「フー・ファイター」として知られているものでした。不明機の回収のため、ヒトラーは不明機回収部隊を派遣します。部隊はグロスマイスター大尉が率いる降下猟兵中隊で、カッツェンボルンの村へと向かいます。

一方、カッツェンボルンではユダヤ人の科学者たちが親衛隊によって移送される途中、道に迷っている所に、村の民間防衛隊長であるバウルが彼らにガソリンを提供する代わりに、墜落した不明機の調査を依頼します。しかし、その親衛隊は墜落地点に向かう道中で行方不明になってしまいます。

後日、グロスマイスター大尉の指揮する部隊がカッツェンボルンに到着し、情報収集を開始します。しかし、彼らが墜落機を調査するために向かった先には、異形者と化した親衛隊の隊員たちが待ち受けていたのです。回収部隊は異形者と交戦し、村へと撤退しますが、街は次第に地獄と化していきます。これらの異形者たちは人々を襲い、瞬く間に数を増やしていく様子が描かれています。

回収部隊と住民たちは、外れの修道院に籠城し、到着予定の増援部隊を待ちながら、互いに防衛に努めます。物語の核心は、このような状況下に置かれた人物たちの思考と行動に迫りながら進行します。各キャラクターの背景や絆も巧みに描かれ、緊迫した場面が繰り広げられます。

主な登場人物

・マクシミリアン・フォン・グロスマイスター: 降下猟兵中隊の指揮官で、騎士道精神を持つ。
・ハラルト・オスター: 中隊の若き曹長で、実戦経験豊富。
・レイラ・ウィンターボーン: 捕らわれたイギリス人女性で、ストーリーの中でグロスマイスターと絆を深めていく。
・ヘルムート・ゲルトマン: ユダヤ人の学者で、重要な知識を持つ。
・ヨセフィーヌ・クニッケ（ぺピ）: カッツェンボルンの少女で、異常な人々を目撃する。
・フランツ・ブライエル: 修道院の院長として住民たちを守る。

これらの登場人物たちは、それぞれの背景を持ちながら、同じ状況に巻き込まれ、宿命的な結びつきを持って進んでいきます。各キャラクターの選択が物語の展開に大きく影響を与える様子が印象的です。

まとめ

『鏖殺の凶鳥』は、ウルトラ自然的な出来事と戦争の悲劇を交錯させながら、人間の内面を探求する作品です。終戦間近での混沌とした時代背景の中に潜む恐怖や人間関係の複雑さが丁寧に描かれています。読者は、主人公たちの運命を見守る中で、緊迫したストーリーに引き込まれることでしょう。

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