鏨

たがね：金属と石を削るための道具

たがねは、金属や石材を加工するための、古くから使われている重要な道具です。鋼鉄製の刃をもち、ハンマーと組み合わせて使用することで、素材を削り、形作ります。日本語では「たがね」、英語では「chisel」と呼ばれますが、英語のchiselは、日本語の「たがね」と「のみ」を包括する、より広い意味を持っています。欧米では、金工用と木工用といった区別は一般的にされません。

多様な用途と種類

たがねの用途は多岐に渡り、大きく分けて鍛冶、彫金、石工などに使われます。たがねで削ることを「はつる」といいます。それぞれの用途によって、形状や大きさが異なり、非常に多くの種類が存在します。

機械工におけるたがね

機械加工においては、主に以下の3種類が用いられます。

平たがね: 平面を削るための、最も基本的な形状のたがねです。
烏帽子たがね: くさびを入れる溝を掘ったり、材料に溝を付けるために使われます。独特の形状が特徴です。
特殊たがね: 丸い溝を切ったり、隅を直角に削るなど、特殊な加工に用いられるたがねです。様々な形状の特殊たがねが存在し、加工内容に合わせて使い分けられます。

彫金におけるたがね

彫金においては、大きく「彫りたがね」と「打ち込みたがね」の2種類に分類されます。

彫りたがね: 素材を削って模様を彫り込むためのたがねです。毛彫りたがね、丸毛彫りたがね、片切りたがね、刃たがね、鋤きたがね、剣先たがね（線象嵌たがね）など、様々な種類があり、それぞれ異なる表現を得意としています。
* 打ち込みたがね: 金属板を打ち込んで模様を付けるためのたがねです。目切りたがね（布目象嵌）、抜きたがね、直線用蹴り上げたがね、曲線用蹴り上げたがね、直・曲用側寄せたがね、ひょうたんたがね、ずらせたがね、魚々子たがね、石目打ちたがね、打ち出したがね、はまぐりたがね、なめくりたがね、足たがね、均したがね、裁ち切りたがねなど、多様な形状と機能を持つたがねが存在します。それぞれの形状が、独特の模様や効果を生み出します。

採鉱におけるたがね

近代的な削岩機や火薬を用いた発破採掘法が普及する以前は、ハンマーとたがねが、鉱石の採掘において重要な役割を担っていました。熟練の技術と体力が要求される、過酷な作業でした。現在では、安全性の高い機械化された方法に取って代わられていますが、歴史的な鉱山技術を知る上で、たがねは重要な道具です。

まとめ

たがねは、その形状や用途の多様さから、金属加工、石材加工、彫金など、幅広い分野で活用されてきました。それぞれの分野において、熟練の技術者によって巧みに扱われ、美しい作品や精巧な加工物を生み出してきた、歴史と伝統のある道具です。現代においても、その精緻な加工能力は、多くの職人や技術者によって高く評価されています。たがねは、単なる道具ではなく、技術と歴史を伝える重要な文化遺産と言えるでしょう。

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