長崎事件について
概要
長崎事件は、
1886年8月に長崎に停泊した清国の
北洋艦隊の水兵によって引き起こされた
暴動です。この事件は、日本と清国の関係に大きな影響を与えました。清国の水兵たちは、日本の許可を得ることなく勝手に上陸し、
長崎市内で暴れまわった結果、混乱が広がりました。事件の舞台は、当時の日本における国際的な緊張感が高まる中で発生したものであり、日本側に清国に対する敵意を強める要因となりました。
背景
1886年7月、
北洋艦隊は対ロシア牽制と朝鮮への威圧を目的として出動しました。そして、艦隊の主力艦である「定遠」などの艦船は、
長崎港に向かい、石炭の補給と修理を行うことになりました。この背景には、艦隊の修理のためには長崎しか適切なドックが存在しなかったことがあります。
事件発生
1886年8月1日、清国
海軍の
北洋艦隊の
軍艦が
長崎港に入港しました。しかし、
8月13日、約500人の水兵が無断で上陸を開始し、長崎の市内で乱暴狼藉を働きました。彼らは泥酔状態となり、婦女子を追い回したり遊郭に押し入ったりしました。この混乱の中で、警察による鎮圧が試みられましたが、水兵たちの反抗によりさらに事態が悪化しました。
特に注目すべきは、遊郭での
暴動です。水兵たちが順番待ちに対して怒りを露わにし、遊郭の物品を破壊したことがきっかけで暴力が拡大しました。丸山町
交番の警察官が
逮捕に向かったものの、
逮捕された水兵を奪還しようとする仲間たちが襲ってきました。
8月15日、事件がさらなる暴力に発展しました。清国水兵約300人が再び上陸し、警察が注意を促すと、それに激怒した水兵が
巡査を襲撃し、一名が死亡、他の
巡査たちも重傷を負いました。これに対抗するために市民たちも参加し、
乱闘が広がりました。最終的に、日本の警察と清国水兵の間で激しい戦闘が繰り広げられ、死傷者が続出しました。
事件の処理
事件後、日清両国の政府は、法律に基づいて事件関与者を処分することで合意しました。また、撫恤料として日本からは52,500円、清国からは15,500円が支払われることに決まりました。さらに、長崎での外国
軍艦の行動についてルールを設け、再発の防止を図りました。
その後の影響
北洋艦隊は、後に日本を訪れる際には事前に日本政府の同意を得るようになりました。これにより、一時的ではありますが、両国の友好関係が表向き成立しました。しかし、長崎事件は清国に対する日本の警戒感を強める契機となり、
海軍の拡張を進める要因となりました。また、政治的な動向においても、民権論から国権論へと転換するきっかけとなったことから、その影響は多岐にわたりました。
警察官の帯刀に関する補論
この事件を受けて、
日本の警察官が今後帯刀することを禁じる要求が行われたとされます。事件の処理において、警察官の装備の軽さが問題視され、それが早期の鎮圧を妨げた要因として考察されています。結果的に、様々な背景の中で、日本の警察の装備や対応のあり方が見直されるきっかけともなりました。
参考文献
- - 馮青『中国海軍と近代日中関係』
- - 『長崎県警察史 上巻』
- - その他関連文献
この長崎事件は、単なる
暴動にとどまらず、国際関係や軍事政策にまで大きな影響を与えた重要な歴史的出来事でした。