長崎高等学校 (旧制)

旧制長崎高等学校：原爆の爪痕と戦後教育の光と影

1945年8月9日、長崎市に投下された原子爆弾は、街を壊滅状態に陥れました。その被害は旧制長崎医科大学附属医学専門部にも及び、多くの教職員や学生が犠牲となりました。校舎は完全に破壊され、大学の再建は絶望的な状況に陥りました。

この壊滅的な状況の中、附属医学専門部の存続は困難を極めました。原爆被害により、十分な教育体制の維持は不可能となり、大学再建への支障も懸念されました。そのため、1947年3月、附属医学専門部は廃止されることとなります。しかし、そこで問題となったのが、既に専門部で学んでいた学生たちの進路です。

多くの学生は、転学を余儀なくされました。しかし、様々な事情で転学が困難な学生も存在しました。こうした学生たちの救済を目的として、1947年5月14日、旧制長崎高等学校が設立されました。これは、いわゆる「戦後特設高等学校」の一つであり、高等科（理科のみ）3年の課程が設置されました。

設立の背景には、原子爆弾による甚大な被害と、その後の混乱の中で、教育の継続を望む学生への支援という切実な必要性がありました。長崎医科大学第二医院（諫早市）を校舎として使用し、6月には授業が開始されました。旧附属医専の学生は、それぞれの学年を高校の学年に対応させて編入し、新規入学の生徒ととも学び始めました。

旧制長崎高等学校は、単なる教育機関としてだけでなく、戦後の混乱期において、被爆地の復興と人材育成に重要な役割を果たしました。多くの学生にとって、新たな希望の灯台となり、将来への道を切り開くための支援となりました。

しかし、この特設高校の寿命は長くはありませんでした。1949年5月31日、学制改革により新制長崎大学が設置されると、旧制長崎高等学校は他の旧制学校と共に同大学に包括されました。そして、1950年3月31日、3回の卒業式を終えた後、旧制長崎高等学校は廃止されました。残された生徒たちは、新制大学の教養部などに編入し、それぞれの道を歩んでいきました。

旧制長崎高等学校の歴史は、わずか数年間に過ぎませんでしたが、その存在意義は非常に大きいです。原爆という未曽有の災害の中で生まれたこの学校は、戦後日本の教育制度改革の一端を担うとともに、被爆地の復興と人材育成に貢献しました。その歴史は、未来への教訓として、そして希望の象徴として、記憶にとどめておくべきでしょう。

旧制長崎高等学校の設立は、単なる学校創設という枠を超え、戦後日本の社会構造や教育制度、そして人々の生き様を映し出す重要な出来事でした。その歴史的背景と社会状況を理解することで、現代社会における教育や社会貢献の在り方について、改めて考える機会が得られるでしょう。

設立の経緯：

1940年：長崎医科大学に臨時附属医学専門部が併置（軍医養成目的）。
1944年：臨時附属医学専門部が附属医学専門部と改称。
1945年8月9日：原爆投下により附属医学専門部壊滅、多数の死傷者。
1947年3月：附属医学専門部廃止。
1947年5月14日：旧制長崎高等学校設置（附属医学専門部学生の救済のため）。
1949年5月31日：新制長崎大学に包括。
* 1950年3月31日：長崎高等学校廃止。

その後：

旧制長崎高等学校の卒業生たちは、様々な分野で活躍し、社会に貢献しました。彼らの経験と努力は、現代社会における教育や人材育成を考える上で貴重な教訓となるでしょう。また、この高校の存在は、戦後日本の復興と発展において重要な役割を果たしたことを示しています。

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