長野マラソン

長野マラソンは、日本の長野県長野市で毎年4月に開催される市民参加型のフルマラソン大会です。1998年に長野市で開催された冬季オリンピックの感動とレガシーを後世に伝えるため企画され、その翌年、1999年の春に第一回大会が開催されました。長年にわたり地域に根ざしたマラソンとして親しまれてきた「信毎マラソン」（信濃毎日新聞社主催、40年以上の歴史を持つ）がその母体となっています。

歴史と名称変更

大会開始当初は「長野オリンピック記念長野マラソン」という名称でした。一時はオリンピックの名を冠するフルマラソンとして世界的にも珍しい存在でしたが、2015年に日本オリンピック委員会（JOC）からの要請を受けて、現在の「長野マラソン」に名称が変更されました。この名称変更は、より広く、一般的な市民マラソンとしての位置づけを明確にするものでした。

コースの特徴

コースは、長野オリンピックが開催された主要な施設群を巡るように設定されています。エムウェーブ、ホワイトリング、ビッグハットといった、かつて世界の舞台となった会場の前を通過し、ランナーはオリンピックの記憶を感じながら走ることができます。フィニッシュ地点は、開会式および閉会式が行われた長野オリンピックスタジアム（現在は野球場として利用されています）です。スタート地点については、当初は山ノ内町にあるオリンピックメモリアル聖火台前が使われていましたが、第6回大会からはコースレイアウトが見直され、現在は長野市吉田地区の長野運動公園をスタート地点としています。

参加資格と記録

本大会への参加は、大会当日時点で満18歳以上の男女（高校生を除く）が対象となります。日本陸上競技連盟に登録している競技者だけでなく、未登録の一般ランナーも参加が可能です。また、国内外から推薦された招待競技者も出走します。長野マラソンを完走した全てのランナーは、日本陸連公認の記録証を受け取ることができます。

大会運営の変化

受付方法についても近年変更がありました。第26回大会（2024年）までは、大会前日の指定された時間帯に会場でのみ受付が行われていましたが、第27回大会（2025年）からは前日受付が廃止され、アスリートビブス（ゼッケン）や参加賞などは事前に参加者へ郵送される方式に変更される予定です。

メディアによる放送

テレビ放送については、大会が現在の形になってしばらくの間は、主催者の一つであるNHKが、オリンピック時に使用された放送センターを活用してNHK教育テレビ（Eテレ）で生中継を実施していました。しかし、レギュラー番組（『新日曜美術館』や『将棋の時間』など）が休止されることへの視聴者からの反発や、市民マラソンの生中継では構成が長くなりがちな点などを考慮し、近年は1時間の録画番組として放送する形式に変わっています。2013年以降には、NHK BS1のランニング番組『ラン×スマ街の風になれ』の中で、タレントランナーが挑戦する企画として大会の模様が紹介されたこともあります。

ラジオ放送に関しては、地元メディアであるSBCラジオが毎年、大会の様子を実況生中継で伝えています。

特記事項

長野マラソンのフルマラソンには5時間の制限時間が設けられています。これは一般参加可能な市民マラソン大会としては比較的厳しい設定と言えます。しかし、その人気は高く、新型コロナウイルスの感染拡大前までは、募集開始からわずか数日、年によっては開始後わずか数十分で定員に達するほどの激しいエントリー争いが展開されていました。特に第11回（2009年）と第12回（2010年）大会は、いずれも受付開始当日の約5時間で定員の8,000人に達し締め切られました。2014年の第16回大会に至っては、2013年10月のエントリー受付開始からわずか26分で募集終了となった記録があります。一方で、2回の中止を経て3年ぶりに開催された第24回（2022年）大会では、9日間の受付期間中に約7,000人のエントリーにとどまり、以降、第25回（2023年）は16日間、第26回（2024年）は1ヶ月半と、近年はエントリー期間が長期化する傾向も見られます。

過去には、自然災害や感染症の影響を受けて大会が中止された事例が複数あります。2011年大会は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震、およびその翌日に長野県北部で発生した地震の影響を受けて、3月22日に中止が決定されました。この際、エントリーしていた参加者からの参加費は全て義援金として寄付されました。なお、この大会の女子の部は、当初名古屋国際女子マラソンが対象だった世界陸上テグ大会の選考会を兼ねる予定でしたが、震災による名古屋大会の中止を受け、長野マラソンが代替として位置づけられていました。さらに、2020年および2021年の大会は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、いずれも中止となりました。

また、2005年からは本大会に加えて、長野車いすマラソンも同時開催されており、多様なアスリートが集う大会となっています。

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