長野宇平治

長野宇平治：日本の建築界を牽引した巨匠

長野宇平治（ながの うへいじ）は、慶応3年（1867年）に越後国高田（現在の新潟県上越市）で生まれ、昭和12年（1937年）に70歳で没した日本の建築家です。彼は、日本建築士会（現在の日本建築家協会）の初代会長を務め、日本の建築界の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと教育

長野宇平治は、高田の名主の家に生まれましたが、父親が事業で失敗し、経済的に苦しい幼少期を過ごしました。しかし、親族の支援を受けて勉学に励み、第一高等中学校を経て、1893年に帝国大学工科大学造家学科（現在の東京大学工学部建築学科）を卒業しました。

建築家としてのキャリア

卒業後、長野は横浜税関や奈良県庁で嘱託として勤務した後、1897年に日本銀行に入行しました。日銀では、辰野金吾の指導のもと、大阪、京都、小樽などの支店建築の設計監理を担当し、その才能を開花させました。特に、日本銀行大阪支店は彼の代表作の一つとして知られています。

1909年には、台湾総督府庁舎の設計競技で乙賞を受賞し、その実力を広く知らしめました。1912年に日銀を退職し、その後は台湾総督府の嘱託を務め、1913年には自身の設計事務所を開設しました。事務所開設後は、日銀岡山支店や大倉精神文化研究所など、古典主義様式の建築を手がけ、その洗練されたデザインが評価されました。

日本建築士会の創設と活動

1917年、長野は日本建築士会の初代会長に就任し、建築家の地位向上と職能確立に尽力しました。建築士法の制定に向けて奔走し、建築業界の発展に大きく貢献しました。

日銀本店増築と晩年

1927年には、日銀本店修増築のために再び日銀に技師長として迎えられ、本店修増築や広島、松江などの支店建築を手がけました。しかし、日銀本店増築工事の竣工を目前にした1937年、70歳で生涯を閉じました。

長野宇平治の建築作品の特徴

長野宇平治の建築作品は、初期には和洋折衷の意匠を取り入れ、その後、古典主義様式へと変化していきました。特に、銀行建築においては、その堅牢で重厚なデザインが特徴であり、彼の設計した多くの建築物が現在も現存し、その価値を伝えています。

現存する主な作品

長野宇平治が手がけた主な建築作品として、以下のようなものが挙げられます。

日本銀行本支店
日本銀行本店本館（修理保存）
日本銀行大阪支店
日本銀行京都支店
日本銀行小樽支店
日本銀行岡山支店
日本銀行広島支店
日本銀行松江支店
その他の建築物
旧奈良県庁（解体保存）
周防銀行本店
北海道銀行本店
台湾総督府庁舎
横浜正金銀行青島支店
三井銀行下関支店
三井銀行広島支店
六十八銀行奈良支店
大倉精神文化研究所

これらの作品は、長野宇平治の建築家としての才能と、日本の建築史における彼の重要な役割を示す証となっています。

まとめ

長野宇平治は、日本の建築界を代表する建築家の一人であり、その作品は今もなお多くの人々に愛されています。彼の建築に対する情熱と才能は、日本の建築史に深く刻まれ、後世に語り継がれていくでしょう。

もう一度検索