長野師管

長野師管（ながのしかん）は、太平洋戦争末期の1945年2月11日に設けられ、同年4月1日に廃止されるまでの約2ヶ月間という非常に短い期間のみ存在した、大日本帝国陸軍の管区です。

当時、日本の本土に設置されていた14の師管の一つとして、東部軍管区の指揮下に置かれました。その管轄区域は長野県と新潟県にまたがっており、内部は二つの連隊区に区分されていました。すなわち、長野県を管轄する長野連隊区と、新潟県を管轄する新潟連隊区です。このように、管轄下に二つの連隊区のみを持つ師管は、他には金沢師管が存在するにすぎませんでした。

この長野師管は、1945年1月22日に制定（同月24日公布）された昭和20年軍令陸第1号による陸軍管区表の改定によって新設されました。これは、それまで仙台師管の管轄下にあった新潟県と、金沢師管に属していた長野県の地域を分割して編成されたものです。しかし、この改定には付則があり、しばらくの間は従前の体制が維持されることになっていたため、発足当初の長野師管は、実質的な業務を伴わない名目上の管区という側面が強かったとされています。

師管が担う管区業務、例えば地域の防衛計画の策定や徴兵・動員といった任務は、通常は管轄する師団に委任されていました。戦時下にあったこの時期には、多くの師管において、外地への派遣部隊が編成された後に本土に残された留守師団がその任にあたっていました。長野師管についても、日本陸軍は、今回の陸軍管区表改定で同時に廃止となった姫路師管を管轄していた留守第54師団を長野へと移駐させ、長野師管の管轄部隊と定めました。

ところが、長野師管が発足するわずか数日前の2月9日に制定（翌10日公布）された昭和20年軍令陸第2号により、軍の管区制度にさらなる大きな変更が加えられることになりました。これは、一時的な性格を持つ留守師団に代わり、常設の「師管区部隊」が管区の防衛や動員といった任務を恒常的に担う新たな制度を導入するものでした。

この新たな軍令に基づき、1945年4月1日をもって、多くの師管が「師管区」へと改編されました。長野師管も例外ではなく、同日をもって廃止され、「長野師管区」へと名称と組織を変更しました。これに伴い、それまで長野師管を管轄していた留守第54師団も、新たに編成された長野師管区部隊へとその役割を引き継ぐことになりました。

このように、長野師管はわずか2ヶ月という短命に終わりましたが、これは太平洋戦争末期における日本陸軍の急激な組織改編の一端を示すものであり、従来の師管制度から常設の師管区部隊による体制への移行期に位置する存在でした。

管轄した連隊区は以下の通りです。

長野連隊区（長野県）
新潟連隊区（新潟県）

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