間の楔

『間の楔』

概要

『間の楔』は、吉原理恵子が手がけた日本のBL小説で、道原かつみの魅力的な挿絵が添えられている作品です。1986年12月から1987年10月まで雑誌『JUNE』に連載され、その後1992年に文庫版として出版されました。本作は、ドラマCDやOVAとしても展開されており、メディアミックス作品として多くのファンに支持されています。

物語は、巨大なコンピュータが支配する惑星アモイを舞台に展開されます。この世界ではサイボーグ・アンドロイドたちが人間を従属させるという、退廃的ながらも非常に魅力的な背景があります。支配層であるサイボーグは「エリート」と呼ばれ、メカニカルな身体を持ちながら、脳だけは生身である存在です。エリートたちは、惑星の政務や外交、貿易などを担い、その地位によって髪の色を染め分けることで瞬時に階級を認識可能としています。

市民である人間たちは、自由に暮らしているように見えながらも、実はかなりの制約を受けているというおぞましい現実があります。エリートたちは人間を「ペット」として飼い、選ばれたことに誇りを持たせながらも、真の人間らしい尊厳を奪っています。このような逆転した支配関係が、物語の重要なテーマとなっています。

あらすじ

主人公のリキは、最下層のスラム街に住む若者です。そんなリキが、宇宙の最高権力者の一人であるエリート「ブロンディー」のイアソンと運命的に出会い、物語が動き出します。身分の差がある二人の関係は次第に深まりますが、その道のりは決して平坦ではなく、リキはイアソンの執着に戸惑い、反発します。

この作品では「愛の形」が様々に描かれています。リキの目を通せば、彼は理不尽な状況に翻弄される性奴としての苦悩が浮かび上がります。また、一方でイアソンの視点に立つと、彼がリキとの関わりを通じて感情を取り戻していく様子が描かれるのです。お互いの感情に翻弄される中で、二人は感情に無自覚ではいられず、惹かれ合っていきます。しかし、彼らの関係は、ペットとその主人という歪んだもの。彼らは鎖に縛られながらも最後に穏やかな時を共にすることを選ぼうとします。

登場人物

• - リキ: 本作の主人公であり、黒髪・黒瞳を持つ異質な存在。スラム出身の若者で、強烈な個性を持つが、他者からの執着には無自覚である。
• - イアソン・ミンク: タナグラのエリート「ブロンディー」。冷酷な存在であったが、リキとの出会いを通して心の成長が描かれる。
• - カッツェ: イアソンの忠実な部下で、二人の関係を正確に把握し、重要な役割を果たす。
• - ラウール・アム: イアソンの唯一の親友であり、医療分野を担当する。
• - ガイ: スラム出身で、リキの同棲相手。リキを解放するために激しい行動を起こす。

世界観と用語

物語は、主にアモイという惑星で展開されます。この世界は、自然とも資源とも縁遠い貧困の星であり、そこに現れたAI「ユピテル」が人間を支配し始めます。エリートたちは、自己の美しさと知性に溺れ、支配階級としての特権を享受しています。

メディア展開

本作は、OVAやドラマCDとしてもリリースされており、日本国外でも英語版が出版されています。特に、2012年にはリメイク版が登場し、新しいファン層を魅了しています。リキとイアソンを中心に描かれる愛憎劇は、視聴者・読者に深い印象を残すことでしょう。

『間の楔』は、機械と人間の支配関係を描いた、独特の視点を持つ作品であり、深く緻密なテーマが織り交ぜられた素晴らしい物語です。

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