間人ガニ

幻のカニ「間人ガニ」：京都府丹後町の至宝

間人ガニ（たいざがに）は、京都府京丹後市丹後町の間人（たいざ）漁港で水揚げされるズワイガニの最高級ブランドです。その希少性と極上の味わいから「幻のカニ」と称され、多くの食通を魅了しています。

漁獲方法と生育環境

間人ガニは、経ヶ岬沖の限られた漁場で、わずか5隻の小型船による日帰り漁でのみ漁獲されます。漁場は水深230～300メートルの深海部で、魚礁がなく、溶存酸素量が多く、年間を通して水温が0℃～1℃に保たれた「日本海固有水」と呼ばれる特殊な環境です。この環境が、良質なプランクトンを育み、身が大きく詰まった間人ガニを育てます。

徹底した品質管理

間人ガニは、漁獲後すぐに漁師自身が厳選し、「たいざガニ」の文字と船名が刻印された緑色のタグを取り付けます。さらに、大きさ、身詰まり、重さ、傷の有無など約50項目をチェックし、厳しい基準をクリアしたものだけが間人ガニとして認められます。2006年には、カニ産地として全国で初めて地域団体商標に登録されました。

鮮度へのこだわり

日帰り漁という短い時間で漁獲されるため、間人ガニは鮮度が抜群です。漁場から漁港まで2～3時間と近く、水揚げされたばかりのカニは生きたまま競りにかけられます。1995年には全船に冷海水装置が導入され、鮮度をさらに高める努力が続けられています。

味わい

間人ガニは、生食できるほどの鮮度が自慢です。茹でガニはもちろん、刺身、焼きガニ、しゃぶしゃぶなど、様々な調理法で楽しめます。繊細で上品な甘みと、とろけるような食感が特徴で、一度食べたら忘れられない味わいです。

歴史とブランド化

昭和40年代頃、丹後ちりめんが全盛を極めた時代に、機屋が京都室町へのお歳暮として間人ガニを活用したことが、ブランド化の始まりと言われています。しかし、当時は「越前ガニ」として販売されており、間人ガニの独自性は認識されていませんでした。そこで、地元の仲買人たちが「間人ガニ」として売り込み、徐々にその名が知られるようになりました。

1980年代には、乱獲による漁獲量の減少や安価な輸入ガニの台頭により、間人ガニの需要が減少しました。そこで、資源保護と品質管理を徹底し、他産地との差別化を図ることで、ブランド価値を高める取り組みが行われました。1988年にはブランドを示す緑色のタグが導入され、2006年には地域団体商標に登録されるなど、そのブランドは確立されました。

漁獲制限と資源保護

近年、間人ガニの漁獲量が減少傾向にあることから、漁業者らは自主的な漁獲制限や資源保護に取り組んでいます。具体的には、

秋漁期（9月1日～11月5日）の底曳網漁の操業禁止
春漁期（3月21日～5月31日）の特定海域での底曳網の操業禁止
水ガニ（脱皮直後のカニ）の水揚げ禁止
モモガニ（未成熟なカニ）の水揚げ禁止

などの規制を設けることで、持続可能な漁業を目指しています。

産地偽装問題と対策

2024年には、他地域のカニに間人ガニのタグを付けて販売する産地偽装事件が発生しました。これを受け、漁協は従来の緑色のタグに加え、漁獲履歴を確認できるQRコード付きの白色プレートを導入するなど、再発防止策を強化しています。

間人ガニを味わう

間人ガニは、高級料亭や旅館などで提供されるほか、近年ではインターネット通販でも購入できるようになりました。冬の味覚の王様「間人ガニ」を、ぜひ一度ご賞味ください。

特産品・地域ブランドとしての活用

間人ガニは、そのブランド力を活かし、様々な特産品や地域ブランドとして活用されています。

かにすきセット
間人アイス
京丹後市デザインマンホール
セイコ蟹のテリーヌ
* コッぺちゃん（京丹後市のマスコットキャラクター）

また、旅館等で廃棄されていたカニ殻は、肥料や健康食品の原料として再利用されるなど、資源の有効活用にも繋がっています。

間人ガニは、その美味しさだけでなく、漁業者たちの努力と、地域全体のブランド意識によって支えられています。これからも、幻のカニ「間人ガニ」の物語は続いていくでしょう。

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