間瀬峠

間瀬峠（まぜとうげ）は、日本の埼玉県に位置する峠の一つです。

この峠は、埼玉県の北西部、具体的には秩父郡長瀞町と本庄市児玉町の市町境付近にまたがっています。峠道は埼玉県道287号長瀞児玉線の一部を形成しており、その標高は384メートルと比較的なだらかな山越えの道と言えます。かつては「馬背峠」とも呼ばれていた記録も見られます。

間瀬峠の地理的な特徴は、秩父地域と県北部、さらに関越自動車道の下り方面（主に群馬県南部や利根川流域方面）を結ぶルート上に位置している点にあります。特に、観光シーズンなどで長瀞町周辺の主要道路が混雑する際には、この峠道が迂回路として機能し、地域間の移動における渋滞緩和に一定の役割を果たしています。このように、間瀬峠は地域の交通ネットワークにおいて、必ずしも主要な幹線ではないものの、利用価値を持つ連絡路としての機能を有しています。

峠の頂上付近からは、陣見山方面へと続く林道陣見山線が分岐しています。この林道と間瀬峠の一部の区間においては、安全上の理由などから原動機付自転車および自動二輪車の通行が禁止されている箇所が存在するため、該当車両で通行を予定している場合は注意が必要です。また、本庄市側には、峠と同名の「間瀬堰堤（まぜえんてい）」と呼ばれるダムがあり、それによって形成された人造湖が「間瀬湖（まぜこ）」として親しまれています。湖周辺は地域の憩いの場ともなっています。

間瀬峠というその独特な名称には、古くから地元に伝わる興味深い言い伝えがあります。伝説によれば、平安時代初期に東北地方の蝦夷征討などで名を馳せた武将、坂上田村麻呂（さかのうえのたむらまろ）に追われたとされる双頭の大蛇が、この峠に逃げ込み、そこで追い来る坂上田村麻呂の姿をじっと、まるで「まんじりと」見つめていたといいます。この言い伝えに基づき、この峠はかつて「まんじり峠」と呼ばれていた時期があったとされています。そして、長い歴史の中で言葉が変化し、現在の「間瀬峠」という名称になったと語り継がれています。この伝説は、地域の歴史や文化に深みを与えています。

交通路や自然環境の一部としてだけでなく、間瀬峠は現代のポップカルチャーの世界にも登場したことがあります。例えば、人気漫画作品であり、アニメ化もされた「頭文字D（イニシャル・ディー）」の「Fourth Stage」シリーズにおいて、この間瀬峠が舞台の一つとして選ばれ、迫力ある峠でのカーアクションシーンなどが描かれました。これにより、自動車愛好家など、作品を通じて間瀬峠の名前を知った人も少なくありません。

このように、間瀬峠は標高384メートルとそれほど高くはありませんが、埼玉県の交通路としての機能、周辺の自然環境、古くから伝わる名称の由来に関する伝説、そして現代の創作作品への登場など、多様な側面を持つ峠です。日本の数ある峠の一つとして、その名が記されています。

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