関東大震災朝鮮人虐殺事件

関東大震災朝鮮人虐殺事件

関東大震災は1923年9月1日に発生した大規模な地震で、日本各地では甚大な被害が生じました。その混乱の中で、特に目を引く悲劇が発生しました。それが「関東大震災朝鮮人虐殺事件」と呼ばれる一連の事件です。この事件は、震災に伴い流布された根拠のない流言を背景に、多くの朝鮮人が無差別に襲撃・殺害されたことを指します。

事件の背景

震災直後、日本社会には不安と恐怖が蔓延していました。そこで、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」や「朝鮮人が放火を試みている」といったデマが流れ始め、多くの市民が不安を感じ、パニックに陥っていました。政府もこの流言に対して、誤った情報を発信し、混乱を助長する結果となりました。

時には、警察が流言を助長する電報を発信することで、朝鮮人に対する極度の憎悪が生まれました。このような状況下で、民間の自警団が結成され、朝鮮人だけでなく誤認された日本人や中国人も虐殺の犠牲となりました。

具体的な出来事

例えば、9月3日には自警団が組織され、暴力行為が横行しました。また、東京都心では多くの朝鮮人が襲撃され、数多くの命が奪われました。横浜市でも同様の事件が起き、無辜の人々が殺害されました。このような状況は、警察や軍の駐屯地でも発生しました。

自警団の活動が過激化する中、朝鮮人だけでなく、彼らと誤認された日本人や中国人に対しても暴力が振るわれました。こうした行為は、当時の社会に広がる差別意識を反映したものであり、特に「不逞鮮人」というレッテルが大きく影響しました。中国人や内地人であっても、朝鮮人に似る外見を持っている人々は、無情に襲撃されました。

言論と対応

内閣府中央防災会議の報告書では、殺傷事件による犠牲者の人数は正確には把握できていないものの、震災による全死者数の1%から数%に及ぶとの見解を示しています。しかし、議論が多いため、具体的な数字を挙げることは難しいのが現実です。この事件に対しては「虐殺はなかった」という主張も存在しており、今でも論争の的となっています。

震災後の新聞報道では流言の広まりが重要視されており、混乱を避けるため、内務省が「朝鮮人に関する記事を一切掲載するな」と各紙に通達しました。政府のこの対応が、流言の真偽を確かめる機会を奪い、さらに恐怖感を助長してしまったのです。

賠償と追悼

虐殺事件の犠牲者に対しては、正当な賠償や弔慰金が支払われていたものの、その額や範囲には問題が残りました。行政機関は、民間で殺害された朝鮮人の人数を233人という数字で報告しつつも、実際には数千人に達したのではないかとも言われています。

この悲劇は日本社会でも忘れ去られることなく、年々関心が高まっています。1973年には、関東大震災における朝鮮人犠牲者追悼碑が設立され、毎年の追悼式が開催されています。2023年には改めてこの事件への関心が高まり、公式な追悼文の送付が検討されるなど、社会的な議論も続いています。

結論

関東大震災時の朝鮮人虐殺事件は、デマや流言を背景にして起こった悲劇です。戦後の日本社会においても、この事件の認識と追悼は重要なテーマであり続けています。私たち人間は、歴史的な教訓を学び、二度と同じ過ちを繰り返さない姿勢が求められています。

もう一度検索