阪神155形電車

阪神155形電車、101形・161形貨車：事業用車両の系譜

阪神電気鉄道（阪神）では、営業用の旅客車両以外にも、鉄道の維持・管理を目的とした事業用車両が活躍していました。ここでは、その中でも特徴的な存在であった155形電車と、同時期に製造された101形、161形貨車について解説します。

155形電車：大型高性能救援車

155形は、1969年8月に神戸高速鉄道への乗り入れ開始に合わせて武庫川車両工業で製造された救援車です。石屋川車庫に常備され、事故や災害発生時の復旧作業を迅速に行うために開発されました。

車体構造

全長18.7m、全幅2.76mという大型の車体を持ち、外観は当時導入が進められていた151形に準じた赤茶色で塗装されていました。切妻型の両運転台構造で、前面には2枚窓、中央に2灯のヘッドライト、左右に標識灯を備えています。側面には、資材の積み降ろしを容易にするため、幅1.3mの大きな開き戸とデッキ、パワーゲートが設けられました。また、側面にはスライド式のアルミサッシ窓が片側4箇所設置され、窓のない部分には棚やフックが設けられ、救援用資材が搭載されていました。

主要機器

台車と電装品には、3011形の廃車発生品が流用されました。具体的には、3561形3568の機器換装時に発生した東芝製のものが使用され、台車はTT-6、モーターは出力60kWのSE-516が4基、制御器はPE-15C-Hが装備されました。連結器は装備されていませんでしたが、取り付け可能な構造となっていました。

101形：レール運搬車

101形は、1962年に武庫川車両工業で製造されたレール運搬車です。台車の上にレール吊り上げ用のチェーンブロックと連結棒を取り付けただけのシンプルな構造で、トロッコのような外観でした。常時は今津駅近くの側線に留置され、出動時には151形に連結・牽引されました。連結器は151形の簡易連結器に対応したピンリンク式、ブレーキは自動直通ブレーキのAMMを搭載していました。

161形：砕石運搬用ホッパ車

161形は、1965年12月に日立製作所で製造された砕石運搬用のホッパ車です。積載荷重は25tで、国鉄のホキ800形と同形態、塗色も黒一色でした。私鉄車両の特徴として、バンドン式密着連結器と電車スタイルの尾灯が取り付けられていました。101形と同様に、常時は今津駅近くの側線に留置され、出動時はモーターカーに牽引されましたが、151形との連結も可能であり、実際に連結された写真も残っています。161形は1988年12月に廃車されました。

変遷と終焉

155形は、その高い能力が期待されたものの、幸いにも大規模な事故や災害が発生することは少なく、石屋川車庫と尼崎車庫間の入出場時に使用される程度でした。101形や161形は保線工事に出動しましたが、夜間の作業が中心だったため、日中の走行を目撃する機会は稀でした。1971年には、101形の手動チェーンブロックが電動ホイストに換装されています。

時代の流れとともに、工事用貨車を機械扱いとする事業者が増え、阪神も例外ではありませんでした。1982年に101形が新型レール運搬車に置き換えられて廃車、1988年には161形がダンプトロリーに代替されて廃車されました。これらの代替車両は、いずれも保線用機械として扱われ、車籍を持っていません。

155形は、後にパンタグラフが下枠交差式に交換され、旧型救援車153形の代替として登場した110形の登場後も石屋川車庫で待機していましたが、地下線内での事故発生時には自動車で資材を搬入する方が効率的であると判断され、1992年7月24日付で廃車されました。

これらの事業用車両は、阪神の安全運行を陰で支え続けた重要な存在でした。

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