阪神501形電車

阪神501形電車

阪神501形電車は、かつて阪神電気鉄道が保有していた路面電車車両で、1914年8月に開業した北大阪線のために製造されました。同社が所有した旅客車の中で唯一の四輪単車でした。

概要

阪神初の支線である北大阪線（野田 - 天神橋筋六丁目間）の開業に合わせ、1913年末から1914年にかけて木造4輪単車の501形が18両製造されました。製造は名古屋の築港車輌が担当しました。当初は24両の予定でしたが、計画変更により20両、最終的に18両の製造となりました。

車体

501形は路面電車タイプの両運転台車両で、車体は木製、全長は約7.9mでした。屋根はモニタールーフで、客室とデッキの間には扉がありましたが、乗降口には扉はありませんでした。前面は当初、ベスチビュール（前面窓）なしの計画でしたが、製造時に上半部に窓ガラスが取り付けられ、右窓内に方向幕が装備されました。しかし、ポール操作の都合上、3枚窓の中央は欠き取られ、窓の下半部には手ブレーキ操作用の四角い穴が開けられていました。

主要機器

台車はブリル21-E、モーターは出力18.7kWのGE-54Aを2基搭載していました。制御器は直接制御のGE製B-18、ブレーキは電気ブレーキと手ブレーキを使用しました。集電装置は1形と同様のダブルポールで、全線併用軌道を走行するため、前面に救助網が装備されていました。

車両不足時の余剰車

1914年8月19日の北大阪線開通時には、18両すべてが野田駅構内に新設された野田車庫に配属され、北大阪線の運用に充当されました。しかし、1916年には8両が廃車となり、他社へ譲渡されました。1921年には本線で余剰となった51形が北大阪線に転属し、501形と共通で使用されるようになりました。

1916年9月14日付けで511~518の8両が廃車されましたが、阪神の社史には当初から10両製造とされており、8両に関する資料は残っていません。しかし、そのうちの1両が王子電気軌道に譲渡され7号になったという話や、1926年設計認可で福博電車に1両が譲渡され169号になったという記録が残っています。

当時、阪神本線は乗客数が急増していましたが、第一次世界大戦の影響で台車や電装品の輸入が困難でした。501形は低速の四輪単車であり、本線の高速走行には不向きであったため、車両不足にもかかわらず廃車せざるを得ませんでした。

改良、そして置換

1920年には、吹きさらしであった前面窓の中央にも窓が取り付けられ、窓下部の開口部にはカバーが取り付けられました。ただし、中央部分はポール操作のために開口部となっており、その左右に取り付けられたカバーはブレーキハンドル操作のために大きく張り出していました。この結果、高運転台のような特徴的な前面形状となりました。その後、時期は不明ですが制御装置がGE-18Aに換装され、1929年には大阪駅の貨客分離に伴う梅田貨物線開業のために立体交差が必要となり、鉄道省からの補助金でSM-3空気ブレーキが追設され、同時にDH-10コンプレッサーが搭載されました。

改良を重ねながら北大阪線で使用されてきた501形でしたが、大正から昭和へと時代が変わるとともに沿線の開発が進み、四輪単車の501形では輸送力が不足するようになりました。1929年に31形が新造されると第一線を退き予備車となり、1933年3月に全車が廃車されました。廃車翌年の1934年には、6両が阪堺電気鉄道に譲渡され、同社の51形51~56となりました。また、502と510の2両は、前面窓の撤去や抵抗器の増設などの改造を施され、車庫内の入替車として使用されました。

脚注

参考文献

『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号　No.640　特集：阪神電気鉄道
『阪神電車形式集.3』　2000年　レイルロード
* 『車両発達史シリーズ 7　阪神電気鉄道』　2002年　関西鉄道研究会

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