防護柵 (道路)

道路防護柵のすべて：安全と景観の調和

道路を走行する車両や歩行者の安全を守るために設置されている防護柵。その目的、種類、構造、維持管理、デザイン、そして歴史について、詳細に解説します。

1. 防護柵の設置目的

道路における防護柵の主な目的は、以下の4点に集約されます。

車両の道路外逸脱の防止：進行方向を誤った車両が道路外に飛び出すことを防ぎます。
乗員および車両の損傷軽減：衝突時の衝撃を吸収し、乗員への傷害や車両の損傷を最小限に抑えます。
第三者への被害防止：逸脱車両による歩行者や周辺施設への人的・物的被害を防ぎます。
車両の進行方向復元：衝突した車両を安全な方向へ誘導します。

防護柵の所有者は、国土交通省、都道府県、市町村などの道路管理者です。

2. 防護柵の種類

防護柵は、対象者（車両と歩行者）によって大きく2種類に分類されます。

2.1 車両用防護柵

車両用防護柵は、衝突時の衝撃吸収方法や構造によって、さらにいくつかの種類に分類されます。

たわみ性防護柵: 衝突エネルギーを柵と車両の変形によって吸収する、緩衝性に優れたタイプです。ガードレール、ガードパイプ、ボックスビーム、木製防護柵、ケーブル型防護柵などが含まれます。設置区間の前後には、安全確保のため一定の長さを延長して設置するのが一般的です。
ガードレール（Gr）: 波型断面のビームと支柱で構成され、衝突時の衝撃はビームの引っ張りや支柱の変形で抵抗します。破損個所の交換が容易です。高速道路では強度を高めるため、ビームの山が3つのものが用いられることが多いです。
ガードパイプ（Gp）: パイプ状のビームと支柱からなり、景観性に優れます。歩車道分離帯などで多く使用されます。
ボックスビーム（Gb）: 高い剛性を有する角形パイプのビームと支柱で構成されます。走行速度の高い区間で使用される傾向があります。
木製防護柵: ビームに木材を用いた防護柵で、環境配慮の観点から注目されています。
ケーブル型防護柵（ガードケーブル、Gc）: 複数のケーブルと支柱で構成され、山間部や積雪地域での景観配慮が必要な場所に適しています。
橋梁用ビーム型防護柵: 高い剛性を持ち、変形量が比較的少ないのが特徴です。
剛性防護柵（コンクリート製防護柵）: 衝突時にもほとんど変形しない高強度な防護柵で、事故リスクの高い場所に使用されます。「フロリダ型」「単スロープ型」「直壁型」などがあります。

2.2 歩行者自転車用防護柵

歩行者や自転車の路外転落防止、車道への無断横断防止などを目的として設置されます。生活道路などでは、車両用防護柵が設置できない場合に用いられます。

2.3 その他の防護柵

オートガードなど、方向復元機能を持つ特殊な防護柵もあります。

3. 強度による種別

車両用防護柵は、衝突時の衝撃エネルギーに対する強度によって、A種、B種、C種などに分類されます。一般的に、A種は高速道路など、C種は市町村道などに使用されます。歩行者自転車用防護柵も、強度に応じて種別が設定されています。

4. 防護柵の構造

4.1 設置高

車両用防護柵は、路面から上端まで0.6m～1.0m程度、歩行者自転車用防護柵は1.1m（転落防止用）または0.7～0.8m（横断防止用）程度が一般的です。

4.2 材料

鋼材、アルミニウム合金材、ステンレス鋼材などが用いられます。歩行者自転車用防護柵には木材も使用されます。錆や腐食を防ぐための処理が重要です。

4.3 基礎

地盤条件に合わせて適切な基礎工事が行われます。たわみ性防護柵では、支柱を地中に埋め込む方法が一般的です。橋梁上などでは、アンカーボルトなどを用いた方法が用いられます。

5. 維持管理

道路管理者は、定期的な巡回点検を行い、損傷箇所の修理や補修、清掃などを行います。ボルトのゆるみ、腐食、金属片の付着などには特に注意が必要です。積雪地域では、除雪による損傷を防ぐための対策も必要です。

6. 防護柵のデザイン

近年では、景観への配慮が重要視されています。シンプルな形状、透過性の確保、存在感の低減、人との親和性を考慮したデザインが求められます。色彩も、周辺環境に調和したものが選定されます。

7. 防護柵の歴史

アメリカでは1924年頃から、日本では1956年から防護柵の設置が始まりました。その後、設置基準や構造が改良されてきました。金属片問題への対策なども行われています。

8. まとめ

道路防護柵は、道路の安全確保に不可欠な施設です。その設計、施工、維持管理においては、安全性と景観の調和を考慮することが重要です。本解説が、道路防護柵に関する理解を深める一助となれば幸いです。

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