阿武山古墳

阿武山古墳について

阿武山古墳（あぶやまこふん）は、大阪府高槻市の奈佐原と茨木市の安威に位置する古墳であり、国の史跡に指定されています。標高281.1メートルの阿武山の山腹にあり、昭和初期に重要な発見がありました。

歴史的な発見

1934年、京都帝国大学の地震観測所が地下からこの古墳の石室を偶然発見しました。古墳は通常の盛り土がない浅い溝で形成された直径82メートルの円形の墓域を持ち、墓室は地表のすぐ下にありました。この墓室は切石で組まれ、内部は漆喰で塗り固められ、上に瓦が覆われて埋め戻されていました。棺は漆で布を何層にも固めて作られた夾紵棺で、赤と黒の漆で装飾され、国内で初めて発見されたものです。

驚くことに、棺の中には60歳前後の男性のミイラ化した遺骨がほぼ完全な形で残っていました。肉や毛髪、衣装も確認され、金の糸が散らばっているなど、その他の副葬品としてはガラス玉を編んで作った玉枕が存在していました。このような貴重な発見により、被葬者が藤原鎌足である可能性が浮上しました。

メディアによる騒動

この発見は1934年4月29日、大阪朝日新聞により大きく報道され、翌日から多くの見物人が押し寄せ、訪れた人数は約2万人に達しました。成因部分の記録には、藤原鎌足が埋葬された場所に関する古文書が言及されており、彼がただちに埋葬された場所から移された可能性が指摘されました。江戸時代には近くにある将軍塚古墳が彼の墓所とされていたことも影響しているようです。

その一方で、発掘作業に関わる関係者の間でトラブルが発生しました。特に、発掘を主導した京都大学理学部・地震観測所は、考古学の知識が乏しく遺跡への配慮が不足していたため、ぬかるんでいる状況が指摘されました。これを受け、大阪府は見物人が増加することで遺物が劣化する危険性を憂慮し、発掘作業をどのように進めるかで観測所と対立が生じました。最終的には、遺骨の調査が不十分なまま「貴人の墓」は埋め戻されることが決定されました。

被葬者の研究と謎

1982年に埋め戻される前にエックス線撮影した結果が入手され、1987年の分析により被葬者について新たな知見が得られました。彼は大きな身体的損傷を受けた後、寝たきりの状態で亡くなったこと、また、散らばる金の糸が当時の最高冠位である織冠に関連していることが判明しました。このことから、被葬者は藤原鎌足に繋がるとする説が有力視されていますが、同時期の他の人物に比定する見方もあり、学術的な議論は続いています。

さらに、2014年に行われた発掘調査では、阿武山古墳に似た古代の煉瓦が発見され、これが藤原鎌足に関連する可能性が指摘されました。このことから、彼が隠居していた場所とされる三島別業の位置に関する新たな考察がなされているのです。

文化財としての重要性

阿武山古墳は、日本の歴史や文化において重要な位置を占めており、1983年には国の史跡として指定されています。古墳が持つ考古学的な価値や、当時の貴族層の生活様式を理解する手がかりとして、今後の研究に期待が寄せられています。

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