阿部友里香

阿部友里香氏は、1995年10月7日に岩手県山田町に生を受けたパラアスリートです。生まれながらにして左腕に障害を抱えながらも、障がい者スキーのクロスカントリーとバイアスロンという二つの種目で、世界の舞台を舞台に活躍しています。

幼少期から競技との出会い

山田町で育った阿部氏は、幼い頃からスポーツに親しみ、小学生時代にはバレーボールに打ち込み、活発な少年時代を送る中でボーイスカウト活動にも参加していました。転機が訪れたのは、山田中学校の2年生だった2010年です。テレビで観戦したバンクーバー冬季パラリンピックのスキー競技に心を奪われます。自身と同じく腕に障害を持つ選手が、一本のストックを巧みに使いながら力強く滑走する姿に深い感銘を受け、これが彼女が本格的にスキーを始める決定的なきっかけとなりました。

震災、そして競技への専念

中学卒業を控えた当時、阿部氏は地元の高校へ進み、これまでのバレーボールと新たに始めたスキー競技、双方を続けることを考えていたといいます。しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、故郷である山田町も大きな被害を受け、彼女自身も被災しました。この未曽有の経験が、阿部氏の進路に大きな影響を与えます。震災からの復興へ向かう困難な状況の中で、彼女はスキー競技への情熱をより一層強く抱くようになり、競技者として高みを目指す決意を固めます。そして、翌4月、スキーの強豪校として全国に知られる岩手県立盛岡南高等学校への進学を決意します。この進学と同時に、日立ソリューションズが運営する「チームAURORA（アウローラ）」スキー部の下部組織であるジュニアスキークラブにも入部し、パラアスリートとしての道を本格的に歩み始めました。

国際舞台での活躍

盛岡南高校在学中から、阿部氏は国際大会で頭角を現し始めます。特に、高校3年生だった2014年には、ロシアで開催されたソチ冬季パラリンピックに出場し、クロスカントリースキーのクラシカル15kmで8位入賞を果たすという快挙を達成しました。高校卒業後は、大東文化大学国際関係学部で学びながら競技を続け、着実に実力をつけていきます。

大学卒業後の2018年、阿部氏は日立ソリューションズに入社。同社の「チームAURORA」に所属し、アスリートとして競技活動を継続する環境を得ました。そして、同年3月に開催された平昌冬季パラリンピックでは、ノルディックスキー日本代表選手として選出され、再び世界の舞台に立ちました。

パラリンピック以外にも、阿部氏は世界選手権やワールドカップといった主要国際大会で多くの実績を残しています。世界選手権では、2013年スウェーデン大会でのクロスカントリー・リレー6位、2015年アメリカ大会でのバイアスロン・スプリント4位、2017年ドイツ大会でのバイアスロン・スプリント5位など、常に世界のトップクラスで戦っています。ワールドカップにおいても、たびたび上位に進出し、特に2015年の旭川大会ではスプリント種目で２度の２位、ミドルクラシカルで３位を獲得するなど、複数回の表彰台経験があります。これらの成績は、彼女がクロスカントリーとバイアスロンの両種目において高いレベルにあることを証明しています。

生まれ持った障害、そして故郷を襲った大震災という困難を乗り越え、競技への情熱を燃やし続ける阿部友里香氏。彼女の力強い滑りとひたむきな姿勢は、多くの人々に勇気と感動を与えています。今後のさらなる活躍が期待される、日本の障がい者スポーツ界を牽引する存在の一人です。

もう一度検索