阿部譲

阿部譲(あべ ゆずる)は、1916年1月28日、徳島県に生まれました。旧制浦和高等学校を経て、東京帝国大学経済学部に進学。在学中は、同大学のラグビー部で活躍しました。

大学卒業後、阿部氏は日本製鐵八幡製鐵所に勤務。ここでもラグビー部の一員として活動を続け、並外れた運動能力と指導力を見せつけました。企業人としてのキャリアを積み重ねる傍ら、ラグビーへの情熱も失うことはありませんでした。

その後、阿部氏は新[[日本製鐵]]で副社長の地位に上り詰めました。高度経済成長期、日本の鉄鋼業界は大きな変革期を迎えており、阿部氏は数々の困難な課題に立ち向かい、その手腕を発揮しました。その経験は、後に日新製鋼の社長、そして会長へと至る礎となりました。

日新製鋼においては、社長、会長として企業を牽引し、日本の鉄鋼業界に多大な貢献を果たしました。経営手腕に加え、阿部氏の人格とリーダーシップは、部下や同僚からの厚い信頼を集めました。企業経営における彼の決断力と先見性は、今日の日本の産業構造にも影響を与えていると言えるでしょう。

阿部氏の活躍は、経済界だけにとどまりません。彼は日本ラグビーフットボール協会の第7代会長を務め、日本のラグビー界発展に尽力しました。選手時代から培った経験と知識、そして指導力を活かし、日本のラグビーの普及と強化に大きく貢献しました。

1990年1月14日、阿部譲は逝去しました。しかし、彼が日本の経済界とラグビー界に残した功績は、今もなお人々の記憶に刻まれ、後世へと受け継がれています。彼の生涯は、困難を克服する力強さと、スポーツへの情熱を兼ね備えた、稀有な存在であったことを示しています。

馬場信浩著『栄光のトライ』(光文社)は、阿部譲の生涯と業績について詳細に記述しています(302頁)。同書によれば、1988年時点での肩書きは「現日新製鋼社長」と記されており、その当時の活躍ぶりが窺えます。また、日刊産業新聞(2002年4月17日)の記事「構造改革に挑む／＜13＞　各論編(３) 新日鉄・住金・神鋼連携の行方(３)」は、阿部氏の経営手腕やその影響を考察する上で貴重な資料となっています。これらの文献からは、阿部氏が日本の経済界に与えた影響の大きさを改めて理解することができます。

阿部譲の生涯は、単なる企業経営者の物語ではありません。それは、困難を乗り越え、常に前進し続ける、不屈の精神の物語であり、日本の経済発展とスポーツ振興に貢献した、偉大な人物の物語です。彼の功績は、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

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