限定上映

限定上映とは

限定上映とは、新作映画を全国の少数の映画館で公開する映画配給戦略です。特に大都市圏のミニシアターなどで、アート系の作品を上映する際によく用いられます。アメリカとカナダでは、600館未満での公開が限定上映と定義されています。

日本では、映画館の規模よりも、上映期間が限定されているという意味合いで使われることが多いです。

限定上映の概要

この戦略は、ドキュメンタリー映画やインディペンデント映画、アート映画といった、特定の層に訴求する作品の市場性を測るために用いられます。また、アカデミー賞のノミネート資格を得るために、年末にロサンゼルスなどで短期間のみ限定上映されることもあります。アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞の場合は、ロサンゼルスとニューヨークでの公開が義務付けられているため、同様の対応が取られます。

例外として、1975年に公開された『ロッキー・ホラー・ショー』は、現在でも限定的に上映されており、映画史上最も長く劇場公開されている作品となっています。

プラットフォームリリース方式

プラットフォームリリース方式は、限定公開の一種で、通常50館以下の劇場で上映を開始します。口コミで評判が広まれば、マーケティングを強化し、徐々に上映館を拡大していきます。成功すれば、全国公開に繋がる可能性もあります。

この戦略の利点は、興行成績が確立するまでマーケティング費用を抑えられることです。一方で、観客動員が伸び悩んだ場合は、キャンペーンから撤退し、損失を最小限に抑えることができます。

初期段階では、「劇場/スクリーンあたりの平均興行収入」が重要な指標となります。映画館あたりの平均興行収入が高い作品は、より広い範囲での上映に成功しやすいと判断されます。

ただし、初期段階で急速に上映館を拡大すると、各館の観客数が少なくなり、映画の勢いが弱く見えてしまう可能性があるため、注意が必要です。

賞シーズンとの関係

プラットフォームリリース方式は、賞レースを意識したスタジオや配給会社がよく用いる手法です。まず主要都市で公開し、観客の反応を見ながら徐々に拡大していきます。特に年末に公開することで、賞の注目を集めやすくなります。批評家の称賛や口コミによって1スクリーンあたりの平均興行収入が上がれば、さらなる拡大公開に繋がります。

賞による注目は、十分な広告予算を持たない小規模な会社にとって有利に働きます。

批判

ストリーミング技術の普及により、地理的な制約を受けずに映画を鑑賞できるようになったため、プラットフォームリリース戦略は時代遅れであるという批判もあります。専門的な映画を大都市圏に限定して上映することは、機会損失に繋がるという指摘です。

具体例

2017年の映画『君の名前で僕を呼んで』は、サンダンス映画祭で初上映された後、ニューヨークとロサンゼルスで限定公開され、その後全国公開されました。配給元のソニー・ピクチャーズ・クラシックスは、上映館の拡大が遅れたことで批判も受けましたが、特殊な観客層を対象とした映画をすぐに拡大公開することは現実的ではないという擁護意見もありました。

2021年には、『ベルファスト』や『スペンサー ダイアナの決意』などの賞候補作がワイドリリース方式で公開されました。この動きは、COVID-19パンデミックが映画館に与えた影響と、ストリーミング時代の到来が背景にあると考えられています。

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