陰謀の街・スペキュラルム

『ザ・ヴェールド・ソサエティ』：陰謀と策略が渦巻く都市を舞台にしたD&Dモジュール

『ザ・ヴェールド・ソサエティ』（The Veiled Society）は、ダンジョンズ&ドラゴンズ（D&D）ベーシック・セット用にデザインされた冒険モジュールです。製品番号TSR 9086として、1984年にTSR社から発売されました。1987年には『陰謀の街・スペキュラルム』というタイトルで日本語版も出版されています。

ストーリーの舞台

このモジュールの舞台となるのは、カラメイコス大公国の首都スペキュラルム。暴力が支配するこの街では、闇社会があらゆる場所に密偵を放っています。プレイヤーは、この街で影響力を持つ三大ファミリー（ヴォーロイ、ラドゥ、トレネスク）間の抗争に巻き込まれ、殺人事件の真相を究明することになります。

冒険の概要

プレイヤーは、スペキュラルムで発生した殺人事件の背後に潜む陰謀を暴き出さなければなりません。3つの対立する派閥のうち、誰が事件を引き起こしたのかを突き止めるのが目的です。そのためには、街中に張り巡らされた情報網を駆使し、容疑者たちを尋問し、証拠を集める必要があります。しかし、スペキュラルムは一筋縄ではいかない街です。プレイヤーは、政治的な駆け引きや裏切り、そして暴力に満ちた状況の中で、自らの選択と行動によって運命を切り開いていかなければなりません。

モジュールの構成

モジュールは、32ページの小冊子と外装カバーで構成されています。小冊子のうち16ページが冒険シナリオ、残りの16ページがペーパークラフトの素材となっています。カバーアートはスティーブ・チャペル、本文イラストはジム・ロスロフが担当しました。ペーパークラフトでは、キャラクターのミニチュアや、小屋、城壁の門などを組み立てることができます。これらのペーパークラフトは、戦闘シーンをより視覚的に楽しむために使用できます。

評価

『ザ・ヴェールド・ソサエティ』は、そのユニークな設定と、プレイヤーの選択が物語に大きく影響を与える自由度の高さから、高い評価を受けています。

ホワイトドワーフ誌では、10段階評価で9という高評価を得ており、「優れた冒険の全ての特徴」を備えていると評されました。特に、スペキュラルムという街で起こる冒険が、プレイヤーに「個人的な選択と行動の自由の、ほとんど比類ない機会を提供する」と評価されています。また、この冒険は「真の役割演技と高度なドラマ」を体験できるとされ、キャラクターは「現実の冒険者のように決断せねばならない―そして結果を受け入れねばならない！」と評されています。

ドラゴン誌では、B1-9 In Search of Adventureに再編集されたものが、「低レベルD&Dキャラクターのための、都市を舞台にした政治的、外交的冒険の稀な実例」と評されました。

その他

このモジュールは、後にB1-9 In Search of Adventureに採用されました。

ローレンス・シックは、著書Heroic Worldsの中で、この冒険を「戦闘と暴力に富むあなたのベーシックシナリオに比べ、いろいろ考えさせられる」と述べています。

『ザ・ヴェールド・ソサエティ』は、単なる戦闘だけでなく、政治的な駆け引きや人間関係、そして倫理的なジレンマなど、様々な要素が絡み合った、奥深い冒険を楽しみたいプレイヤーにおすすめのモジュールです。

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