陸軍残虐物語

『陸軍残虐物語』について

『陸軍残虐物語』（りくぐんざんぎゃくものがたり）は、1963年に公開された日本の映画で、佐藤純彌が監督、三國連太郎が主演を務めた作品です。この映画は、東映東京撮影所が製作し、東映が配給を行っています。

概要

本作は、佐藤監督のデビュー作であり、「天皇」の名のもとに絶対服従を強いられる大日本帝国陸軍内務班を舞台に、厳しい軍隊生活の中での人間性の喪失を描いています。公開当時、映画界では『世界残酷物語』や『武士道残酷物語』などがヒットし、「残酷映画ブーム」と呼ばれる一種のムードが広まりました。これを受けて、本作もまた当時の流行に乗った作品と見なされています。

物語の展開

物語は、大切な妻ウメに見送られて品田中隊に配属された犬丸弥七二等兵の視点から描かれます。犬丸は軍務に忠実であろうと努力しますが、不器用な性格ゆえにビンタや嘲笑を受ける日々を過ごします。亀岡善治軍曹は厳格で、犬丸は彼の指導の下で何度もリンチを受けることになります。

しかし、同僚の矢崎忠義二等兵は亀岡軍曹に取り入ろうとし、逆に反感を買ってしまいます。ある日、鈴木直吉一等兵が犬丸の特配品である饅頭を盗む矢崎を目撃し、矢崎の幹部候補生としての夢は潰えます。矢崎は鈴木と犬丸に対して恨みを抱き、鈴木の銃の部品を便所に捨てるという行動に出ます。この騒動を解決するために犬丸と鈴木は糞溜めに入って部品を探し出すのですが、犬丸は最愛の妻ウメとの面会中に亀岡に巧妙に強姦される衝撃的な展開が待っていました。犬丸は妻を奪われたことで怒りを抱き、亀岡に対して復讐を誓います。

スタッフとキャスト

監督は佐藤純彌、脚本は棚田吾郎が担当しました。撮影には仲沢半次郎が関わり、美術は近藤照男が手がけています。出演者には三國連太郎をはじめ、中村賀津雄、西村晃、江原真二郎など、豪華なキャストが揃っています。

制作経緯

本作は1961年に東映東京撮影所の所長に就任した岡田茂の方針のもと、新たな若手監督の起用が行われて誕生しました。岡田はここで「戦記路線」を打ち出し、新しい映画の潮流を狙いましたが、本作が唯一の作品となりました。

評価と影響

公開当初、映画は高評価を受けましたが、興行的には成功しなかったという結果に終わりました。それでも、三國連太郎は佐藤監督の最高傑作と評価し、監督は本作でブルーリボン賞の新人監督賞を受賞しました。映画は日本映画界における「残酷」の表現を一層強める契機となり、後の作品にも影響を与えました。

同時上映作品

『陸軍残虐物語』と同時上映された映画には、『警視庁物語 全国縦断捜査』がありました。

本作は、戦争の厳しさや人間性の喪失を描いた重要な作品であり、多くの観客に衝撃を与える映画であります。

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