陸軍航空総監部の歴史
陸軍航空総監部(りくぐんこうくうそうかんぶ)は、日本陸軍における航空関係の中央統括機関として
1938年に設立されました。設立の背景には、航空技術の急速な進展と
大東亜戦争の激化がありました。本部は直接
天皇に隷属し、主に陸軍における航空教育を管理する役割を担っていました。
当初、陸軍航空の歴史は
日露戦争まで遡ります。
1904年に臨時気球隊が戦闘に参加したことが、陸軍航空の始まりと言えるでしょう。
1907年には、常設部隊として気球隊が設置され、その後飛行機の導入が進みました。第一次世界大戦後の
1915年12月には、航空大隊が設立され、航空部隊の拡充が進んでいきました。
ただし、航空部隊の教育と運用は、陸軍内の他の
兵科とは異なる特殊な扱いを受けることが多く、教育の専門機関を求める声は高まっていました。その結果、
1919年には陸軍航空部が設立され、航空に関する教育と器材の管理が一元化されました。この組織は数度の改編を経て、
1938年の陸軍航空総監部設立へと至ります。
陸軍航空総監部は、航空教育を専門的に担当する機関として、高度な教育システムを構築することを目的としていました。教育部や総務部など、複数の部門が設けられ、航空兵の育成や航空機の運用に関する研究を行いました。
設立から数年後、数回の編制改正を経て、陸軍航空総監部は
1941年に市谷台に移転し、さらなる拡充を図りました。特に
1942年には、医務部と飛行班が新たに設置され、航空関連の業務が増強されました。
1944年には、戦況の悪化を受けて航空関係の教育機関を軍隊化し、教導航
空軍が編成されます。これは陸軍航空総監部が指導的役割を果たすものでしたが、戦局の悪化に伴い、教育機関の独立性が揺らぐことになりました。
1945年に入ると、戦局は一段と厳しくなり、航空総監部は「当分のうち」閉鎖されることが決定されました。この措置は厳密には廃止ではなく、再開の可能性を残すものでした。しかし、同年8月の終戦を迎え、再開されることはありませんでした。陸軍航空総監部と航空本部は
1945年11月に廃止され、その機能は完全に失われました。
このように、陸軍航空総監部は日本陸軍における航空戦力の教育及び管理を担う重要な機関であったものの、戦後の日本陸軍の解体に伴い、その役割は消滅しました。航空教育の特殊性を考慮した設立から閉鎖に至る歴史は、当時の技術革新と戦争の実情を反映したものといえるでしょう。