障害者政策委員会

概要

内閣府に設置される障害者政策委員会は、我が国の障害者施策における根幹的な計画である障害者基本計画に関する重要な役割を担う機関です。この委員会は、内閣総理大臣が定める障害者基本計画の策定またはその変更に際して、専門的な見地からの調査審議を行うとともに、その結果に基づき政府に対して意見を具申することを主要な目的としています。さらに、一度策定された基本計画が現場で適切に実施されているかどうかを継続的に監視し、計画の遅延や問題が確認された場合には、関係行政機関に対して改善を求める勧告を行う権限も有しています。このように、本委員会は障害者の自立と社会参加の促進に向けた国の取り組み全体を、計画の立案段階からその実行、そして評価に至るまで、専門的かつ実効的に支える役割を担っています。

設置経緯

障害者政策委員会は、2011年8月30日に公布された「障害者基本法の一部を改正する法律」に基づき設置されたものです。この法改正は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律（障害者差別解消法）の制定や、障害者の権利に関する条約の批准に向けた国内法制度の整備など、障害者を取り巻く社会情勢や国際的な動向の変化に対応するために行われました。改正法の施行日である2012年5月21日をもって、それまで障害者施策の推進に関して重要な役割を果たしてきた中央障害者施策推進協議会は廃止され、その機能と役割をより強化・発展させる形で障害者政策委員会が新たに設置されました。これは、障害当事者の意見表明の機会を拡大し、より実効性の高い施策推進体制を構築するための重要な組織再編でした。

役割

本委員会の最も中心的な役割は、内閣総理大臣が策定する障害者基本計画に関することです。障害者基本計画は、障害者の自立や社会参加の支援をはじめとする、障害者施策全般にわたる国の基本的な方針と具体的な施策の方向性を示すものです。この重要な計画を策定したり、状況に応じて変更したりする際には、必ず事前に障害者政策委員会による thorough（徹底的）な調査審議が行われます。委員会では、様々な立場からの議論を経て計画案が検討され、その結果が意見としてまとめられ、内閣総理大臣に対して具申されます。この意見具申のプロセスは、計画に障害当事者の生の声や現場の実情、そして学術的な知見を反映させる上で極めて重要です。

加えて、委員会は、策定された障害者基本計画が各省庁や自治体などによって適切に実施されているかを継続的に監視する役割を担います。施策の進捗状況、予算の執行状況、目標達成度などを検証し、計画通りに進んでいない部分や新たな課題が浮上した場合などを把握します。監視の結果、計画の推進に支障がある場合や、より効果的な施策が必要と判断される場合には、関係行政機関に対して改善や必要な措置を求める勧告を行います。この監視・勧告機能により、障害者基本計画が単なる理念に終わらず、実際に社会の中で効果的に推進されることが担保されます。

組織構成

障害者政策委員会は、30人以内の委員をもって構成されます。委員は、内閣総理大臣が任命しますが、その人選にあたっては、幅広い視点を確保するために、障害者本人、障害者の自立および社会参加に関する事業に実際に従事している者、そして学識経験者のうちから、その分野で適切な知識や経験を持つ人物が選ばれます。障害当事者が委員として参加することは、施策の立案や評価に際して、当事者の視点やニーズを直接反映させる上で不可欠です。また、支援現場の実務者や専門家が加わることで、議論の専門性、現実性、そして多面性が高まります。

委員の任期は2年と定められており、これにより一定期間での委員の交代が行われ、委員会の議論に常に新しい視点がもたらされるよう促されています。委員長は、委員の互選によって選ばれます。委員長は委員会の会務を総括し、委員会を代表する役割を担います。委員会には、特定の専門的な事項について調査させるため必要がある場合には、専門委員を置くことができます。専門委員は、特定の分野に関する深い専門知識や経験を持つ人物が任命され、委員会での審議に必要な専門的調査や意見提供を行います。このような多様な構成員と柔軟な組織体制により、障害者政策委員会は複雑化・多様化する障害者施策の課題に対して、効果的かつ包括的に取り組むための機能を果たしています。

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