雁木囲い

雁木囲い：歴史と進化を辿る将棋の戦法

雁木囲いは、将棋における代表的な囲いのひとつです。その名称は、鳥の雁が斜めに飛ぶ隊列に由来するとされていますが、雪国の庇を思わせる形状から名付けられたという説も広く浸透しています。実際、英語表記であるSnowroofは後者の説を反映したものです。

雁木囲いの歴史的変遷

雁木囲いは、時代によってその意味合いが大きく変化してきました。

江戸時代初期～1930年代：対振り飛車戦における引き角戦法

この時代の雁木は、振り飛車に対して用いる引き角戦法を指していました。檜垣是安という在野の棋士が、船着き場や寺社の階段から着想を得て考案したと伝えられています。左銀を7七に繰り出し、角を7九に引くことで角筋を開き、飛車と角の連携による攻撃を仕掛けるのが特徴です。駒の配置が階段状に連なる様子が、雁の飛ぶ姿に似ていることから、雁木と名付けられました。しかし、美濃囲いの普及などにより、次第に衰退していきました。

1940年代～2000年代：相居飛車戦における二枚銀囲い

昭和前期に木村義雄名人らが好んで用いた、相居飛車戦における二枚銀の囲いが、雁木囲いと呼ばれるようになりました。これは、江戸時代の雁木戦法と類似した駒組みであること、そして、二枚の銀が並んだ形状を雪国の庇に見立てたことから、誤解に基づいて広まった名称です。この時代の雁木は、堅実な守りを重視する囲いとされ、矢倉囲いなどに対してやや劣ると見なされていました。攻めにも活用される場合もありましたが、プロの棋戦ではあまり見られませんでした。

2010年代～現在：多様な雁木囲いの台頭

コンピュータ将棋の発展やプロ棋士による新たな研究により、雁木囲いは再評価されています。2010年代後半からは、従来の二枚銀雁木に加え、ツノ銀雁木など、様々なバリエーションが登場。これらは「新型雁木」と呼ばれ、矢倉に代わる主流戦法の一つとして確立しつつあります。新型雁木は、玉の配置の柔軟性、攻守のバランスの良さ、桂馬の早跳ねに対応できる点が評価され、プロの対局でも頻繁に見られるようになりました。

雁木囲いの特徴と戦略

雁木囲いの特徴は、時代によって変化していますが、共通して言えるのは、その柔軟性です。

旧型雁木（二枚銀雁木）： 堅実な守りを重視する囲いでしたが、近年では攻めに転じる指し方も開発されています。
新型雁木： 多様なバリエーションが存在し、玉の配置や駒組み、攻め方の自由度が高いことが特徴です。ツノ銀雁木は、特にその柔軟性が際立っています。

雁木囲いは、相手に応じて様々な戦法に対応できる適応力も持ち合わせています。

雁木囲いに関する書籍

雁木囲いに関する書籍は、旧型と新型の両方について多数出版されています。これらの書籍は、雁木囲いの歴史、戦法、実戦例などを詳しく解説しており、学習に役立ちます。

まとめ

雁木囲いは、その歴史の中で様々な変化を遂げ、現代将棋においても重要な戦法として存在感を示しています。その柔軟性と多様性は、将棋の魅力の一つと言えるでしょう。将棋を深く理解するためには、雁木囲いについて学ぶことは不可欠です。

もう一度検索