雄町

雄町（おまち）とは

雄町は、日本酒の醸造に用いられるイネの栽培品種です。2022年の酒造好適米としての生産量は美山錦に次いで4位となっています。

概要

主に日本酒醸造に使われ、全国で栽培されていますが、その9割は岡山県産です。特に、岡山市、岡山市瀬戸（旧瀬戸町）、赤磐市赤坂町地区産のものが有名です。

雄町は、その優れた品質から各地で交配種として利用され、山田錦や五百万石といった優良品種の親として重要な役割を果たしてきました。現存する酒造好適米の約3分の2が雄町の系統を受け継いでいると言われています。

歴史

発見

1859年（安政6年）、備前国上道郡高島村雄町（現在の岡山市中区雄町）の岸本甚造が、伯耆大山への参拝帰路に珍しい米を発見しました。彼はその米を譲り受け、持ち帰って栽培し、1866年（慶應2年）に「二本草」と名付けました。

その後、雄町には良い酒米があるという評判が広まり、多くの人々が分けてほしいと希望しました。岡山県南部を中心に栽培が広がり、米の名前もいつしか雄町の名をとり「雄町米」と呼ばれるようになりました。

発展

雄町は、大粒で心白が大きく軟質であるという特徴を持ちます。昭和初期には、品評会で上位入賞するには雄町米で醸した吟醸酒でなければ不可能とまで言われました。しかし、丈が1.8mと高く、台風や病虫害に弱いため、栽培には手間がかかり、生産量は次第に減少。改良品種である山田錦に取って代わられました。しかし、山田錦とは異なる独特の香りと味わいを持っています。

復活

昭和40年代には、栽培面積がわずか6haにまで落ち込み、絶滅の危機を迎えましたが、岡山県の酒造メーカーを中心としたグループが栽培を復活させました。雄町を使用した清酒が再び生産されるようになり、その評価の高さから作付面積も増加傾向にあります。

現状

現在でも、その生まれ故郷である岡山県南部（備前地方）で栽培されており、総称して「備前雄町」と呼ばれます。備前雄町の中でも最高品質とされるのは旧軽部村（赤坂町を経て現在の赤磐市の一部）産のものであり、軽部を含めた旧赤磐郡内で生産された備前雄町は特に「赤磐雄町」と呼ばれています。赤磐雄町は地元酒造メーカーとの契約栽培が多く、他県の酒造メーカーにはなかなか供給されないのが現状です。

瀬戸内海を隔てた香川県でも栽培されており、こちらは「讃州雄町」、隣の広島県で栽培されるものは「広島雄町」と呼ばれることもありますが、生産量が少ないため単に「雄町」と呼ばれることが多いです。

評価

雄町米を使用した醸造酒は、日本国内の品評会のみならず国際博覧会においても高く評価されています。赤磐市内の複数の酒造メーカーが出品した吟醸酒は、第41回モンドセレクション（2002年）で最高金賞、金賞を受賞しています。

雄町は、その独特の風味と歴史的背景から、多くの日本酒ファンに愛され続けている酒米です。近年では、その希少性から高級酒に使われることも多く、日本酒の世界をより深く楽しむための重要な要素となっています。

関連項目

日本酒
酒米
山田錦
朝日 (米)
高島 (岡山市中区)
赤磐市

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