集約分散式冷房装置

集約分散式冷房装置について

集約分散式冷房装置は、鉄道車両に設置される冷房システムの一種であり、1970年に京阪神急行電鉄（現・阪急電鉄）によって開発されました。この方式は、「集中式」と「分散式」のそれぞれの長所を取り入れたもので、車両の快適性を向上させることを目的としています。

1. 集中式と分散式の違い

冷房装置には、集中式と分散式の2つの方式があります。集中式は大きな冷房装置を1台設置するのに対し、分散式は小型の冷房装置を6台から8台搭載します。これらの方式について、以下のような利点と欠点があります。

• - 車体強度: 集中式は大掛かりな車体の補強が必要ですが、分散式は軽微な補強で済み、車両の軽量化に貢献します。
• - 保守コスト: 集中式は機器が1台なので保守が容易ですが、分散式は多くの機器を必要とするため保守コストが高まります。
• - 冗長性: 故障時の影響が少ないのは分散式です。集中式の場合、装置が故障するとその車両は冷房が使用できなくなりますが、分散式なら他の冷房装置が機能します。

2. 集約分散式の特徴

集約分散式冷房装置は、分散式の弱点を補うために考案された方式です。この装置は、大型の冷房ユニットを一定数搭載し、その分保守コストを抑えることを実現しました。加えて、簡易ダクトを使用して冷気を車両内部に効率よく流す仕組みになっています。これによって、一部の冷房装置が故障しても、他の装置から冷気を導入することができ、冷房効果が維持されます。

また、冷房装置の設置に際して必要な車体の補強も、集中式に比べて大幅に軽減されます。

3. 電源供給

冷房装置には、車両の補助電源装置から電力が供給されますが、特に直流電車では電源確保の方法が工夫されています。例えば、架線からの電源をパンタグラフを介して車両に取り込み、専用のインバータで交流に変換する方式などがあります。これにより、効率的な電源供給が実現されています。

4. 採用例

集約分散式冷房装置は、山陽電気[[鉄道]]や西武[[鉄道]]などで見られるほか、小田急電鉄では2000形まで、この方式が用いられました。阪急電鉄をはじめ、東武鉄道や名古屋[[鉄道]]など、1990年代までの長期にわたって採用されていたことも特徴です。また、JR西日本の221系や223系、さらにJR東日本の特急形車両にも多く採用されており、その能力は時代と共に進化しています。

5. 新たな搭載方式

新幹線車両の急速な発展に伴い、床下に冷房装置を搭載する方法が進化しています。1969年に開発された951形試験電車では床下分散式空調が試みられましたが、営業用車両で初めて床下空調が採用されたのはJR東海の300系新幹線です。以降、700系以降の新幹線車両では床下分散式空調が一般化し、他の在来線車両でも類似の技術が採用されています。

まとめ

集約分散式冷房装置は、鉄道車両の冷房方式において、効率性、保守性、可用性を兼ね備えた優れた設計が魅力です。依然として鉄道の冷房装置の主流であり、改良と進化を経ながら、快適な車両環境を提供し続けています。

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