集魚灯

集魚灯とは：漁火が照らす海の光と影

集魚灯とは、光に誘引される魚の性質を利用した漁具の一種であり、漁で魚を集めるために使われる灯火、またはその漁法を指します。古くは「漁火（いさりび）」と呼ばれ、世界中で様々な形で利用されてきました。

集魚灯の歴史

魚が光に集まる性質は、人類が火を使い始めた頃から知られていたと考えられます。日本をはじめ、アジア、アフリカ、地中海、ヨーロッパ、アメリカなど、世界各地で同様の漁法が確認されています。

日本における集魚灯の歴史

江戸時代： 篝火や松脂が使われました。
明治時代： 松明を使った漁法が1910年頃まで見られました。
大正時代： 燃料に石油やアセチレンランプが用いられるようになりました。
昭和時代： 1929年以降、電気を使った集魚灯が普及しました。

集魚灯漁法と対象魚

集魚灯によって集められる主な魚種は以下の通りです。

サンマ
マイワシ
カタクチイワシ
マアジ
ムロアジ
マサバ
トビウオ類
イカナゴ
キビナゴ
コノシロ
イサキ
イカ
エビ

集魚灯の問題点と対策

集魚灯は効率的な漁獲を可能にする一方で、以下のような問題点も抱えています。

乱獲： 無計画な光量や配置は、混獲を増やし乱獲を招く可能性があります。
環境汚染： 水中で使用する集魚灯が海洋ゴミとなることがあります。また、光量を増やすことで二酸化炭素などの温室効果ガス排出量が増加します。

これらの問題に対し、以下のような対策が講じられています。

光力制限： 日本、ベトナム、ノルウェーなどの国々で、集魚灯の光量を制限する規制が行われています。
漁法の禁止： インドでは、乱獲による漁業資源への影響を懸念し、沿岸での集魚灯の使用が禁止されました。また、日本国内でも、地域や漁業者によって集魚灯の使用が制限されています。
混獲防止技術： トロール漁船のフットロープにLEDを設置することで、特定の魚種の混獲を防ぐ試みが行われています。
省エネルギー化： LED照明の導入や、魚の習性を利用した減灯操業など、集魚灯の省エネルギー化が進められています。イカは明るい場所を避けて暗い船底に集まる習性があるため、集まった後に減灯することで燃費を抑えることができます。

集魚灯の未来

集魚灯は、漁業の効率化に貢献する一方で、環境への負荷や資源管理の問題も抱えています。今後は、より持続可能な漁業を実現するために、以下の様な技術開発や取り組みが求められます。

LED照明の高効率化、長寿命化
魚種ごとの最適な光の波長、光量の研究
集魚効果と環境負荷のバランスを考慮した漁具の開発
漁獲データの収集と分析による資源管理の高度化

その他の情報

漁火光柱： 集魚灯の光が氷の結晶に反射し、柱状の光を作り出す現象があります。
不知火： 海上に現れる火の妖怪「不知火」は、漁火の異常屈折によって光源のみが見える現象が由来であると言われています。

関連項目

発光器： 生物が持つ発光器官（例：チョウチンアンコウの擬餌状体）
ルアー、集魚板： 光によって魚を誘引する疑似餌
まき餌(集魚剤)
* 集魚装置

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